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この学校の生徒会長様は、外見と人気で決まるわけで、それに就任できるってことは“特別待遇”が約束されてるってことだ。 それ自体は理解してたから宮代さんの部屋に来たときも、あーやっぱ広いなぁくらいしか思わなかったけど……ベッドが尋常じゃなかった。 俺みたいな一般生徒が使ってるシングルベッドでないことは分かってたけど…………ダブルベッドかと思いきや、映画やファンタジーアニメに出てくる王様が使いそうな、正にキングサイズのベッドだった。 俺は一般人で王様ベッドに寝るなんて恐れ多いのでソファーで寝ますと言ったのだけど、そういう時の宮代さんは絶対に譲らない人だった。 ふたりで“俺がソファーで寝る”を言い合い続けて、結局ふたりでキングサイズのベッドを分け合うことになった。ただ、デカ過ぎるベッドはふたりが寝てもまだふたり分は余裕で空いている。 就寝時間を迎え、暗闇となった寝室は、時計の音以外何も聞こえない。 俺は寝返りを打って、ベッドの外側、壁際を向く。落ち着かない。目を閉じても、時計の音が急かしているように聞こえてくる。 俺はもう一度寝返りを打って、今度はベッドの内側、つまり宮代さんが眠っている方を向く。 仰向けで眠る宮代さんの横顔が、暗闇のなかうっすらと見えた。 俺も寝ないと……。 目を閉じて、どうにか寝付こうと試みていたとき、静かに呟かれた。 「眠れないか?」 「……ぉ、起こしました?」 俺が何度も寝返りなんか打つから…… 「起きてたよ」 「……」 「枕が違うと眠れないとか?」 「はは、そんな繊細じゃねぇっすよ」 宮代さんも内側を向いてきて、ふたりの間は空けたまま向かい合った。 「……優、手貸して?」 「?」 宮代さんの意図することは分からないけど、言われるがまま片方の手を宮代さんに伸ばした。宮代さんはその手を取ると、恋人繋ぎのように指を絡めては少し強く握った。 「?」 「……いつかまた、共に笑い会える日がきっと来る」 「っ……!……その時、あなたは傍にいてくれますか?」 「あぁ、……きっと」 「あなたはいつも、ひとりで何処かに行ってしまうから」 「それは……すまない」 「私はあなたと、笑い合い、生きて行きたいのです」 「……ならば、より努力しよう。その未来のために」 闇のなかでも分かる、宮代さんの微笑んだ顔。 俺と宮代さんの、突然始まったこの会話を誰が理解できるだろうか。 そんな状況がおかしくて笑うと、ぎゅっと握られた手。先程より、熱を帯びている気がする。 「……けど、ひとりで何処かに行くのは優のほう、だよな」 「え?……そーすか?」 「言いながら思ったけど、全体的にルークの台詞は俺じゃないな」 「でも逆も変っすよね。リリーの女口調なんて、宮代さん似合わないし」 言って笑うと、宮代さんは握った俺の手を口元まで持っていくと、手の甲に唇を触れさせた。 「!?」 「俺は思ってるよ。優とずっと笑い合っていけたらって」 「…………ぁの、……それは……どういう…………?」 「優は、どういう意味で取りたい?」 そ、そんな質問返しありかよっ!?それがもし勘違いだったら、めっちゃ恥ずかしいじゃん!! 「……そろそろ寝るぞ」 「……ぇ」 「おやすみ、優」 「えっ……ぁ、はぁ……?」 混乱する俺を残して、宮代さんは眠ってしまった。 俺の手は未だ宮代さんの鼻と頬に触れている。でも離そうと動いたら宮代さんを起こしてしまいそうで、宮代さんの言葉と、手から伝わる熱に俺はただ固まるしかなかった。

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