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仮病を使って休んだ平日は、最高だった。
携帯電話の電源を切って、読書に没頭しまくった1日。物語りに入ってしまえば、考え事なんてしなくて済む。毎日こんな日でいいのに、と何度思ったことか……。
そして現実逃避の休日を満喫して迎えた翌日、俺は教室に到着するや否やクラスメイト十数人に囲まれた。
現状は全く理解出来ていないけど、嫌な予感しかしない。
「なんで昨日休んだの!?」
「……はい?」
「タイミング的に怪しすぎるよ!!」
「……は?」
「藏元くんのこと!!」
「っ!?」
心臓が口から出るかと思った。今の俺に、その名前は刺激が強すぎる。
「ぁ……怪しいって……?」
……も、もしかして……告られたこと、バレてる?なんで……?あれは俺の部屋で起こったことで、藏元が話さない限り噂は広まりようがないだろ……!
「髙橋くんが、藏元くんに告白したんでしょっ!?」
「大スクープ!!」
「…………」
あぁ、そっちか……。
一先ず、胸を撫で下ろす。
「らしいね」
「それで、何か知ってて休んだんでしょ!!」
「いや……何も?」
「嘘っ!だって昨日髙橋くんが、風紀委員長様に捕まったって!」
「……え?」
何それ。初耳っすよ。
「生徒会メンバーが風紀に捕まるなんてっ……余程のことが……」
「…………」
まさか髙橋……藏元から俺とのこと聞いたのか?ショックで…………自棄起こして校則違反をっ……!?いやそんな馬鹿なこと……はするかも。馬鹿だから。あっ悪口じゃなくて素直・純粋って意味で。
「成崎くんは藏元くんと仲いいじゃん!聞いてないの?!」
「あー……えー……」
聞くっつーか……渦中っつーか……
「じゃあそれとなく聞いてよ!仲良しでしょっ!?」
「仲いい……うーん……それは……」
今は状況が変わったし……
「気にならないの!?髙橋くんと藏元くんのことなんだよっ!?」
「うーん……でもほら、細かいところはふたりの問題だし……。ふたりがどうするのか俺は見守るしかっ……ぁ」
言いかけたところで、教室に藏元が入ってきた。それに気がついた生徒たちは蜘蛛の子が散るように俺から離れていった。
俺の言葉は多分藏元にも聞こえていて、藏元は俺を流し見た。
あー……しくじったな俺……
ここで目を反らせばよかったのに、目がいってしまった藏元の口許に、あの時を思い出してしまい咄嗟に顔を背ける。
何っ……意識してんだよ。
チャイムが鳴り、みんなが席に着く。俺も赤くなっているであろう顔を伏せながら席に着いた。ズッキーが教室に入ってくる。
テスト期間中に見せた、あの見るも無惨な姿はどこへやら。ちゃんとした大人に戻っていた。……少なくとも、見た目だけは。
「おっ、成崎。復活したか。体調大丈夫か?」
「はい。お陰様で」
「なんか顔赤いぞ。まだ治ってねぇんじゃねえか?」
ズッキーの一言に、クラスメイトたちがチラチラとこちらを見てくる。藏元は、一切振り向かない。それが余計、緊張を高める。
「大丈夫です。進めてください」
「そうか。無理すんなよ」
「っす」
「あーそうだ学級委員長」
「……何すか」
「夏休みにやってた夏祭り、今年も開催決まったからよろしくな」
無理すんなって言っておいて、早速仕事じゃねえか。
「っす」
「みんなも、委員長困らせないように指示にはしっかり従うようにー。じゃあHR始めるぞー」
ズッキーが連絡事項を読み上げ始めるなか、藏元の後ろ姿にため息を溢した。
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