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「つーわけで、結果、クレープをやることになったぞー」
午後、ズッキーが教卓の前に立って、投票の結果を知らせた。
その知らせに、ネコ側の生徒たちはワクワクしたように喜び、タチ側の生徒たちはネコたちのエプロン姿が見られるな~なんてアホな妄想を膨らませている。
俺から言わせてもらえば、射的とかかき氷の方がよかった。そっちの方が準備楽だし。
「じゃああとは頼んだ成崎ぃ」
報告のみしてあとはいつも通り俺に丸投げするズッキー。教卓の傍にある椅子に座ると、読書を始めたズッキーに、俺も読書したいと念を送りつつ教卓に立つ。
今は首の痕の事もあるし、あんまり目立つところに立ちたくないんだよな……。なるべく動かないように話そう……。
「……じゃあ、グループ分けるよ。とりあえず料理できる人挙手」
一番重要なところから真っ先に質問した。すると何故か、自分のことなのに周囲を気にする奴が数人。その視線を辿って理解した。
「……おーい、正直に言ってねー。進まないからー」
俺の一言に、迷っていた奴らは素直に手を挙げた。大体、3分の2ってところかな。迷っていた奴らは、挙手された光景を見て残念そうな顔をしている。
それもそうだろうよ。藏元は手を挙げていないのだから。
「じゃあ次。この中で、お菓子作ったことある人はー?」
その質問に半数が手を下ろした。……まぁ、だよね。そこはまだ男子高校生らしい。
「じゃあお菓子作ったことある人で3グループ作るよ。で、料理できる人はその人を手伝う形でグループに入ってもらいます」
これならお菓子作り経験者が中心となってそこそこ上手く回るだろう。そう思った俺に、ひとりの生徒が手を挙げた。
「はーい」
「何?」
「成崎くんは、どっちのグループに入るの?」
「……ん?」
「作る方?呼び込み?」
「俺はまぁ……いつも通り。状況に応じて?」
「じゃあ、藏元くんも?」
「……え?」
「だってほら、クラスマッチの時だって……」
その生徒の一言に、先程ガッカリしてた生徒たちの顔色が少し戻った。
「あー……藏元は、料理出来ないらしいから今回は……」
なんだぁと残念がる声と、可愛いと好感度が上がった声が聞こえてきた。
「調理に入らない人たちは、出店の飾りつけと、当日の店番、呼び込みしてもらうからー」
あとはグループの担当時間を決めて、自由時間は夏祭りを回れるようにして……。
「じゃあ3、4人でグループ作ってー。呼び込みグループは誰とでもいいから」
グループのメンバーまでこっちが指示するのは面倒だったので、放り投げた。それにクラスメイトたちは笑い混じりに、サボったーと文句を言ってきた。
わいわいと、楽しげにグループを話し合う皆。数人が、藏元の席に集まっている。
俺は視界の隅で気にしながらも、夏祭りのプリントを見たままみんなの話し合いがまとまるのを待った。
ふと、傍にやって来た人。
「また成崎のサポートに回るね」
「……っ……!?」
変わらずの優しい笑顔でそこにいた藏元に、表情には出さなかったけど、驚いたのは確かだ。
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