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「ほら!やっぱりじゃん!」 「仲良しぃっ!」 「藏元くんってほんと友だち思いだよねぇ!」 盛り上がるクラスメイトたちから表情を隠すように、俺は黒板側を向く。 「……俺が言うのも変だけどさ……気まずくないの……?俺といて」 「……ごめん」 藏元は教卓に置いてあるプリントを見るフリをして、皆からは見えない角度で囁く。 「……別に……謝ることじゃねぇし…………」 謝罪が欲しかった訳じゃない。はっきりとは分からないけど、多分、俺はもっと別の…… 「…………みんな……小声で……」 「……ん……?」 「……俺が成崎と……何かあったんじゃないかって……噂してて」 「…………ぁ」 噂というか……事実ではあるけど……。やっぱり影で囁かれてるのか……。 黒板からほんの少し首を横に向けて俯く藏元を見る。 「…………そんなの成崎は……、……望んでないでしょ」 「…………」 「俺のせいで…………ごめん」 「…………」 「……形だけ、今まで通りに見えるようにするから」 グループ分けはじゃんけんで決めることになったらしく、背後で大盛り上がりしている。 「無理かもしれないけど、安心して欲しい」 「?」 「絶対、もう……触れたりしないから」 「……」 触れる……触れるどころか、今のところ藏元はずっと下を見てて、視線すら合わせないんだけど……。 「あの……さ……」 「はい……」 「この学校にずっといたわけだし……そりゃビックリはしたけどさ、……偏見とかは、ほんと、無いから……」 「……」 「そこは……誤解すんなよ……な?」 怯えているような藏元に、フォローとは言えない微妙な声をかける。すると、藏元はフルフルと横に首を振った。 「期待持たせるようなこと言っちゃ駄目だよ」 「ぇ……いや、俺はっ」 「うん、分かってる。……大丈夫。……成崎は、本当に優しいね」 「…………」 ……なんだろう……。今、藏元といると、気まずいのは確かなんだけど…………、……うーん……。 藏元の気持ちには応えられないのに……藏元を悲しませたくない……。 「…………」 「……くーん!おーい!成崎くーん!!」 「ぁ、え?」 「ちょっとぉ!僕ら放置でふたりの世界かよぉ!」 からかいの一言に教室内は笑いと悪ノリに包まれる。 「何々ぃ?何の相談してたのー?」 「ほんとに友だちだけの関係なのー?」 「うるっさいお前ら!!」 「怒ると益々マジっぽいよー」 「あーはいはい。黙ってー。グループ決まったのかよ」 「成崎くんが、藏元くんとふたりの世界にいるうちに決まったよー」 面倒くせぇなこの絡み。スルーしよう。 「じゃあ紙に書いて提出してー。それで今日は終わり。ばいばーーい」 多方面からいじりの声が聞こえてきたが、それら一切を切り捨てて話し合いを強制終了させる。 「おっ。終わったのか。成崎お疲れ。じゃあなあ」 終了に気づいたズッキーは本を閉じると、さっさと教室を出ていこうとする。 ズッキー、本当に何もしなかったよ…… ため息をついた俺に、扉付近で止まったズッキーが振り返った。 「成崎ぃ……か、藏元王子、お客さんだぞ」 俺と藏元は揃ってズッキーの方へ視線を向けた。 扉前に、髙橋が立っていた。

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