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ちょっとだけ懐かしさを感じる家に着いて、車から降り少し背伸びする。
玄関のドアを、父さんが開けて家の中に向かって声高らかに言った。
「奈々ー!帰ったぞ~!うちの可愛い優も帰ってきたぞ~!」
「父さんほんとやめて」
声でかいから。俺は我慢できるとしても、ご近所さんに聞こえるから。ただの親バカにしか見えないから。
ため息を吐きつつ玄関に腰を下ろして靴を脱いでいると、家の奥からパタパタとスリッパで駆けてくる足音が聞こえてきた。
「ぁ、優ぅ……おかえりぃ」
柔らかい暖かみのあるその声に、俺は足元から視線を上にあげた。
「ただいま、母さん」
「あらぁ疲れた顔してる。大丈夫?」
「んーちょっと眠いかも」
エプロンで手を拭く母さんは、肩までの髪を後ろで1本に結んでいた。父さんの言うように、何か料理を作っていたんだろう。
スリッパに履き替えて立ち上がった俺の顔を目の前で見るなり、母さんは笑顔のまま父さんに視線を移した。
「お父さん」
「なんだ?」
「あんまりしつこくすると優に嫌われますよ」
「!」
「ぇ、え?優に?嫌われる?なんだよそれっ」
ふふふと笑う母さんに、父さんは激しく動揺する。物腰柔らかそうでいて、実は鋭い母さん。俺が車内でずっと父さんの質問攻めにあったことに気がついたんだろう。
「優が疲れるくらい、一体どんなお喋りをしたんです?」
「ちがっ、……俺は優と男同士の話をだなぁ」
「あら、男同士の話って、私はてっきり、両者が熱を持つような、盛り上がる話だと思ってましたけど?」
「も、盛り上がったよ!な?な?優ー」
「大丈夫だよ母さん。いつものことだから」
「優ぅ?ここはあなたの家なのよ?ちょっとは我が儘言っていいのよ。疲れてるんだから休ませて、て」
「ちょ、ちょっと待てよ優、奈々っ!」
リビングに進む俺と母さんのあとを父さんが情けない声で追いかけてきた。
「ご飯まで、もうちょっとかかるんだけどぉ……優どうする?リビングで休んでる?」
「ちょっと部屋で寝てくるよ」
「そう?じゃあ、あとで起こしに行くわね」
「んーありがと」
「えー優ーもっとお喋りしよーぜー」
「んー後でねー」
下で駄々を捏ねる父さんに手を振って、階段を上っていく。上りきったところで、父さんが口に手を添えて楽しげに告げてきた。
「優ー、多分そのうちアミちゃんも来てくれるからな~」
「……はーい」
……連絡とってきたのもアミだし、そうだよね。
特に驚くこともなく、そのまま部屋に入った。
鞄を下ろして、ベッドに寝転がる。
強烈な睡魔が襲いかかってくるなか、携帯電話の受信メッセージを確認する。受信は3件。
クラスメイトふたりと……ぇ。……宮代さん?
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