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「ごめんね?初対面で怒鳴られてビックリしたでしょー」
「あはは、ちょっとねー。呼び捨てなんて元カレ以来だったから」
「ごめん、そういうつもりは……」
「すーちゃん、亜美ちゃんが美人だからって素直に謝ってる」
「そうじゃなくてっ、無駄にビビらせたし」
「うちにはすぐ謝んないじゃん」
「ア……歩生の時は大抵歩生が悪いから」
ややこしくなるから歩生ってちゃんと呼んでみたけど……物凄く違和感が残る。
「歩生ちゃんと優くんって、ほんと仲良しなんだね」
「うん!超仲良し!」
「気のせいじゃないですか」
「こらっそこ認めるところっ!」
騒ぐ歩生に巻き込まれる俺、それを見て笑ってる亜美さん。そのなかへ、亜美さんの隣に座っていた男子が参加してきた。
こいつもこいつで、見た目完璧に仕上げてる。気合い入ってるなー……ぁ、いや、いい事だよね。青春だもん。こういうイベントも大事だよ。
「亜美ちゃんは、男子で仲良しな子とかいないの?」
「うーん……お喋りはするけど、歩生ちゃんと優くんを見ちゃうと仲良しって言えるか自信なくなるなー」
「俺らが基準すか?ちょっと……勘弁してください」
「亜美ちゃん見る目あるね!」
歩生ほんとうるせぇな……
「つーかさ、亜美ちゃんと仲良くしてたら他の男子に恨まれそうだよなー」
「なんで?」
「だって超美人じゃん。めっちゃ可愛いし、ぶっちゃけモテるでしょ?」
あからさまなそいつに若干引いてしまう。
“俺の狙いは亜美ちゃんだ。邪魔すんじゃねぇぞお前”って視線が、気持ち悪い。
大丈夫だよ。邪魔しないよ。そもそも興味ねーよ。勝手に頑張れ。
「うーん……モテる、まで言えるか分かんないけど、告白されることはあるよ」
おぉ……意外と亜美さんも言う子なのね。
「やっぱりー。じゃあ亜美ちゃんの彼氏はイケメン限定だねー」
否定待ちのコメント……お前自分のこと大してブサイクとか思ってねえだろ。どっちかって言うとイケメンに入る部類とか思ってるだろ。
別に……別にさ?張り合うつもりはないけどさ?なんか……腹立つな。今すぐここに藏元、髙橋、宮代さん、東舘さんを召喚してこのなんちゃってイケメンの鼻っ柱をへし折ってやりたい。
……悲しいことに、俺では対抗できないので。
「あー……私、イケメンは信用してないんだぁ」
「?」
「信用?何それ?」
歩生が口を挟んだ。男子も眉を寄せて亜美さんを見ている。
イケメンを否定する女子とはこれ如何に……。
「……イケメンと何かあったんですか?」
「前の彼氏がね、まさにイケメンだったよー。……ぁ、優くん、敬語じゃなくていいよ」
条件反射だよ。敬語が楽なんだよ。
「それって……聞いてもいい話なの?」
歩生が微妙な顔をしている。確かに、こんな場所で重い空気になっても困るしな。
「私は全然話せるよ。でも腹立つ話だからみんなが苛ついちゃうかも」
……あれれ?亜美さんって実は口悪い子?それともハキハキしてる子?何事も白黒つける……的な?今時女子ってこんなもんなのか?俺男子校に馴染みすぎて感覚鈍ってる?……俺行ってたの、男子校だったよな……?
「俺は聞いてみてぇ。イケメンの残念な話ぃ」
最低だなお前……
「聞いてもいいなら聞きたいかなー」
「えーと……なんかね、」
俺の意見は特に聞かないのか……まぁ、全く知らないイケメン元カレの愚痴を溢されたところで俺は何のリアクションも取れないけど。
「努力、とか、根性、とか鼻で笑うような……馬鹿にしてる感じの人だったよ」
「えーなんだそいつー」
たった一言で即行亜美さんに味方する男子。
結局人って他人の悪口で盛り上がるよね。その点で言えば、俺も亜美さんみたいな美人を信用できなくなったよ。
「馬鹿にしてるってどういうこと?」
歩生が素直に疑問に思ったらしく、亜美さんに聞く。
「元カレはイケメンで凄い有名だったんだけど、私は部活で仲良くなったんだー。でも……なんか、他の部員と同じ努力をしようとしないっていうか……試合に負けても自分には関係無い、みたいな態度だったり……」
「うわ、なんだよそれ。感じ悪いなぁ」
「…………」
「亜美ちゃんがマネやってるチームって確か、強豪だよね?それで努力しないとかめっちゃ凄いじゃんその人!」
「ははっポジティブかよ歩生ちゃん!そこじゃねぇって。それが相俟って益々やな感じ、てことだよ」
「……あ、そういうこと?」
3人の会話をただ聞いていた。
……なんだ、これ。……気のせい……か?
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