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「ぃ゛、痛いっすよ!ちょっ、東舘さんっ!」
痛みが伴う程強く手首を掴まれ、何処かに連行されている。振り払おうと腕を振っても、より強く握られ、逃げるどころか痛みが増す。
まずい。なんか知らんけど、いつもの感じじゃないのは確かだ。俺を引っ張ってる東舘さんの背中はいつもより不穏なオーラを纏っていて、俺のなかで焦燥と恐怖が膨れていく。
「どこ行、ぇ、わっ!?」
暗い廊下の先、開けられた空き教室に力業で放り込まれた。
少し離れた廊下の明かりが僅かに届くその教室は、辛うじて物が見える程度だ。
放り込まれた勢いを止められず、思い切り机に衝突して、膝を負傷した。
「い゛って……!クソ……何なんすか!?」
膝を庇いながら振り向けば、目の前に東舘さんがいて、動揺して後退った。……けど、たった今俺と闘った机が真後ろにあって、逃げ道を塞がれた。
目の前に東舘さん、真後ろに机。
ということで、絶体絶命の俺。
これは本当にやばい。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
「……そんなに怖がらないでよ」
優しく呟かれた言葉に、つい、顔を上げてしまった。
「っ!!」
罠にかかってしまった俺は、顎を掴まれて、そのままキスされた。
驚愕して押し返そうと試みるも力の差がありすぎて、びくともしない。
細いくせにっ……!そういうとこスポーツマンかよっ!!!
それならばと顔を反らそうとした時、唇を割り開いて口腔に侵入してきた熱いもの。
ん゛ーーっ!?!?!?
あまりの衝撃に、俺はなりふり構っていられず、思い切り舌に噛み付いた。
「ーっ!」
それにはさすがの東舘さんも驚いて唇を離した。
ペロリと赤い舌を出して、何故か楽しそうに笑った。
「……血の味がする」
「こんな事するから……っ!」
「なりちゃん、俺の血の味はどうですか?」
ゾワリと寒気を感じる。
「キモいっ」
「痛かったけど……でもまぁ、」
「何っ……ぅ!?」
後頭部を掴まれ、そのまま後ろに引っ張られ机に仰向けに倒れ込む。背中をぶつけて一瞬呼吸が止まった。
「……!」
「なりちゃんが付けてくれた傷なら、別にいっか」
仰向けになる俺に覆い被さるように見下ろしてくる東舘さんの目は、めっちゃ怖い。……色欲的な意味で。
恐怖心と戦いつつ抵抗する方法を考えていたら、Tシャツの裾から滑り込んできた手が、俺の無いに等しい腹筋を撫でた。その少し冷たい手を、反射的に抑える。
「ちょっ……やめっ……!ぃや、嫌だっ」
それでも強引に触れてくる東舘さんを、最早どうにもできなくて、恐くて、悔しくて、泣きそうになる。
自分がどれだけ非力なのかを痛感したその時、教室の扉が開いた。
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