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目を開ければ、映ったのはどこかの天井。辺りを見渡せば暗い部屋。 「…………保健室……か、ここ……俺はぁ……どうなったんだっけ……?」 現状を理解できず、寝ぼけ眼を擦りながら起き上がれば膝に感じた違和感。 掛けられていた布団を捲り、膝を確認すれば包帯が巻かれていた。 「…………ぁ、ぶつけて……あ!」 そうだっ!俺、俺!!俺はっ!!俺史上最大の告白をしたんだった!!……けど、体力使い果たしてぶっ倒れたんだ……情けない……。 いやでも!ちゃんとした!藏元にもちゃんと伝わってたし…………。 あれ……?藏元……どこ行った? 暗い部屋を見渡してみても人の気配はない。 「……嘘だろ。俺返事聞く前に…………聞く前に倒れてんじゃねぇよっ」 自分の失態に気づいて、頭を抱えた。 何やってんだよ俺ぇえ……告白ってのは相手の応え聞くまでが告白だろうがっ……!なのに俺は、自分の気持ち伝えることだけに全力注いで……それじゃただの宣言だろうがぁ……!! 逃げられた……結局藏元に逃げられた……ぁ、違うな。俺が放したんだ……。 「……はぁ……」 後悔したって時間は戻らないし、何の解決にもならない。頭では分かっていても、自分の取り返しのつかない行動の結果にため息ばかりを繰り返す。 ベッド横の窓からはぼんやりと外の光が見える。まだ夏祭りはやっている時間らしい。 ……てことは、俺をここに運んだあと藏元は広場に戻ったのかな。 「……もしくは、……髙橋のところに」 自分で言って悲しくなってきた。 告白のときも言った通り、俺が遅かったんだ。 だから今さら何を言おうと妬み、負け惜しみ、負け犬の遠吠え、引かれ者の小唄…………なんだけど……さ……。 恋愛とか、あんまり深く考えたことなかったから余計……失恋とか………… 「あー……辛い……」 「膝?」 「っ!?」 突然現れた他人にビックリして素早く顔を上げた。音を立てないように静かにドアを閉めたその人は、ドア近くのスイッチを押して部屋の明かりを点けた。 「……ぁ」 「他に辛いところある?」 ビニール袋を片手にベッドまで歩み寄ってきた藏元は、ごく自然に俺の体調を聞いてきた。 「……ぁいや……辛いってのは……まぁその……」 フラれた心が辛いんです、とか?……おえぇえぇぇえなんだその台詞気持ち悪い。 「……大丈夫?」 ベッド横の椅子に座って優しく問う藏元は、あまりに普段通りで……逆に俺がおかしいのかと思えてくる。 告白……確かにしたよね?幻覚とかじゃないよね? 「…………あの」 「ん?」 なんでこんな自然に返事してくんの? 「…………」 「?」 「…………俺……あなたに…………告白しました……よね?」 「…………」 「…………」 あ……あれ?……え?無言?……伝わってない? 「……うん」 静かに頷いた藏元に、聞いた自分が戸惑ってしまう。 「……ぇ……と……」 「俺も聞いていいですか?」 「え?……はい」 敬語で話し合う違和感満載のこの会話は、真剣になるべきか、突っ込むべきか。 「もう……成崎に、触れてもいいですか」 撃沈した。

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