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校舎に入って近場の空き教室に入ると、何処でもいいから座るよう促された。 「本当は生徒会室がいいんだけど、ちょっと立て込んでてな……」 「俺は何処でもいいすけど……ぇ、俺、なんかまずいことしました?」 「…………優が、じゃないんだけどな」 「?」 俺の座った席の前の席に座った継さんは俺と向き合って目を細めた。 「……東舘に何された」 「!!!?」 体がビクついて、思わず机を蹴ってしまった。 「えっ……ぁ、や……な、何とは……そのっ」 「……はぁ」 俺が絵に描いたように挙動不審になるから、継さんはため息を吐いて腕を組んだ。 「聞かなくても大体予想はつくが……一方的に、だろ?」 「…………」 ……普通に考えて、東舘さんも千田も生徒会メンバーなんだ。遅かれ早かれあの一件は継さんの耳に入るよな。 「……はい」 「……で、大丈夫か?」 「ぁ、はい、もう、俺は、藏元と千田に助けてもらえたのでっ」 「怪我は?」 「怪我は……特には無いっす」 「……優」 「っ………………。……膝を……」 「はぁ……」 「で、でもっ、藏元が保健室に運んでくれて手当てしてもらったので今は全然」 「……ごめんな」 「…………」 深々と、頭を下げられる。 ……なんで、継さんの責任……みたいになってんの……。 「継さんの謝ることじゃねぇっす」 「あんなでも、東舘は一応友だちだ。その友だちが、優を傷つけた。怖がらせた。助けてやれなくて、ごめん」 「…………」 俺やっぱり、継さんみたいになりたい。 「……あの、それで……あの場に残ったの……千田だけだったんすけど……無事ですか?」 そこが一番気掛かりで聞いてみたら、なんだか複雑そうな顔をされた。 そんなに答えにくい質問なんだろうか? 「…………えっ!?ま、まさか重傷で病院送りとかっ!?」 「あーいや……そういうのは一切無くてさ……」 …………?こんなに歯切れの悪い継さんははじめてだ。 「……あの……?」 「……俺もちょっと……あのふたりの処分に困ってる」 「ふたり!?えっ!?罰則、千田にもですか!?」 「色々ありすぎてな……。事実確認もあったし、ふたりから話も聞いたんだ。ただ、……校則破ったの……両者なんだよ」 「……は……!?」 なに!?どういうこと!?助けてくれた千田は防衛として仕方なく……とかで見逃してもらえるものじゃないの!?でも継さんがそう思ってるってことは、防衛じゃ見過ごせない程の校則違反をっ……!? 「東舘は罰せられて当然のことをしたから厳しくするつもりだったが…………」 「どうかしたんすか?」 「……千田が、“未遂”を踏まえて考えて欲しいと猛抗議してきた」 ……なんと。あんな猛獣状態の東舘さんにも優しいのか千田…… 「……あの、厳しすぎる罰則は俺もちょっと……緩めて欲しいっす」 「優も!?」 「いや、庇ってるとかではなくて!」 ただただ、ファンからの攻撃が怖いんです。俺が原因で東舘さんに罰則、とかバレたら……何されるか想像するだけで目眩がっ……。 「優にまで言われると…………罰則はもう少し考えてみる」 「あざっす!」 ……予想外過ぎるのは、継さんに意見するほど千田が東舘さんを庇ってるということ。 流血沙汰になってないってことは説得したってこと?……でもそれなら、継さんが俺に隠す理由もないし、校則違反にもならない筈。 一体何がどうなったんだ?

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