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「ふたりは、……今どうしてんすか?」 「千田は保健室にいる」 「え!?や、やっぱりっ」 「あー違う。本当にそういうことはないから」 「……はい……」 「ただ……念のため、な」 「…………」 「東舘は、生徒会室にいる」 「ひとりで、ですか?」 「今は落ち着いてるから大丈夫だとは思うんだが……一応、塚本が見張りについてる」 「!?……それは……凄いっすね」 その名前に、驚いたと同時に顔を引きつらせてしまった。 塚本様……というのは、泣く子も黙る風紀委員長様だから。その人が見張りとか……俺だったらめっちゃ怖いんですけど。 でもさっきからずっと…………継さんははぐらかす言い方ばかりしている。 「……あの、」 「なんだ?」 「……俺に、はっきり言わないのは……俺のため……ですか?」 「…………」 「俺が関わってるのは事実ですし、俺のせいで悪化したのなら、罰則は受けます」 「……優」 「実際、俺がもっとしっかりしていれば千田を巻き込むことも無かったわけだし」 「優、あのな……誤解する言い方ばかりしてごめんな。でも、本当に優が罰を受ける理由は無いんだ」 「…………」 「……そうだな……何て言えばいいか……」 視線を横に流して言葉を探す継さんは、暫し考えたあと俺に視線を戻した。 「分かっていて欲しいのは、千田は、自分で望んでやったってことだ」 「……え?」 「同じ学校の中だから、当然、明日以降ふたりに会うこともあるだろうけど、優が責任を感じることは何もないからな」 「…………」 なんだろう。どういうことだろう。結局はっきりとは言われない。むしろ、聞けば聞くほど意味が分からなくなってくる。 「取り敢えず、今回は優が軽傷で済んでよかった」 「……あはは。ご心配とご迷惑おかけしました」 「ほんとだよ」 「ええっ」 「ははは、……前にも言ったけど、困ってるときは勿論頼って欲しい」 「……はい」 「……けど、」 「……はい?」 「藏元にもたまには素直に、助け求めろよ?」 「えっ……な、なんで藏元が出てくるんすか」 狼狽える俺に、その男前の顔は微笑んでみせた。 「あいつも不安だろうし。頼られないと」 「は……?」 「…………仲直り、したんだろ?」 「……あっ、あぁ!はいっ!すいませんでした色々とっ」 そ、そうだ。継さんの部屋に藏元が来た時は俺たち気まずい関係で…… 「……じゃあ、寮まで送るから」 「ぁ……す、ません……」 席を立った継さんに続いて俺も空き教室を出る。前を歩くその大きな背中はいつも俺を助けて、安心させてくれる。 俺はいつ、この人に恩返しできるんだろうか。 「……あ」  「?」 「さっき……チラッと聞いたんすけど」 「うん?」 「今日その……夏祭り中に……告白イベントとか、ありました?」 「?……いや、予定には無かった筈だけど」 「ですよね」 あの生徒たちの会話を思い出す。 やっぱり公開告白の線が濃厚か……。 「どうかしたのか?」 「……そんな感じの話、継さんのほうに何か聞こえてきました?」 「いや?」 「……俺、継さんの力になりますから」 「?どういうことだ?」 「絶対役に立ってみせます……!」 ひとり気合いを入れていると、いつも通り手を繋がれた。 「優には、結構助けられてるんだけどな」 「……まじすか?……え、いつ?心当たりがまるでないっつーか……」 「くくっ……優はそれでいいよ」 「??」 全然分からないけど、とにかく継さんの横顔がかっこよかった。

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