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継さんは宣言通り、俺を寮まで送ってくれた。 部屋まで送ると言われたが、もう周辺には生徒もいるわけで、さすがに人目が気になるのでエレベーターホールで別れた。 ほんと優しい。優しすぎる。ちょっとくらいマイナスなところがあってもいいよな……。 料理できないって弱点は、面白かったし、……ちょっと可愛かったからマイナスになってなかったし。 考えれば考えるほど無いよな…………今度一発芸でも振ってみようか?大スベりしたらちょっと嬉しい……て、最低か。 混んでいたエレベーターを避け、携帯電話をいじりながら階段を上る。 「……一応、電話しとくか……?」 思い出したのは、藏元のこと。 継さんと行くとき、藏元はすごく心配してくれてた。今寮に戻ったと、報告くらいは入れるべきだよな? 携帯電話を耳に当てて、階段を上り続ける。 「──成崎」 「おっすー今戻ったぞー」 「ぁ……そう、無事終わったんだね」 「?うん。だからその……一応?報告しとこっかなって」 「うん。ありがとう。今は……部屋?」 「今階段上ってるとこ」 「階段?」 「おう。……今3階に到ちゃ」 「あ」 「く……」 階段から廊下に出れば、そこでばったりと電話相手に遭遇した。 目の前にいるので、最早必要の無くなった携帯電話を耳元から離す。 「凄いタイミングだね」 「だな。どこか行くのか?」 「飲み物買いに下に……」 携帯電話をポケットに仕舞った藏元は俺の回りをキョロキョロと見渡した。 「…………成崎、ひとり?」 「?うん」 「…………」 ……あっ!!! 「違う違う!俺がお願いしたんだ!目立つからって!部屋まで送るって言われたんだけど、け、……宮代さんが一緒にいたらとんでもない事になりそうだから!!つか、なるから!!」 藏元と一旦別れるあのとき、宮代さんをあんなに怖い目で睨んでいたんだ。何故あんな目をしていたのか、詳しいことは分からないけど、絶対、いい意味じゃない。 「…………そう」 「うん……」 間を空けて、サラッとした返事を返されると何も読み取れないんだけども……。 「……それで、生徒会長からのお話は?大丈夫だった?」 「ん?」 「……副会長絡みの話でしょ?」 「よ、……よくお分かりで……」 「…………」 「……ぁ、それより藏元、買い物に」 「うん。やめた」 「え゛?」 「そっちの話のほうが大事かな」 「…………」 ゆっくり、どちらともなく歩き出す。 「……大丈夫?成崎」 「ん。詳しいことはよく分からなかったけど……取り敢えず千田は無事みたい。東舘さんもなんとかなったらしい。……宮代さんは、めっちゃ疲れてそうだった。夏祭りのあとに騒動の片付け……多分、会長としての仕事もたくさんあるんだろうな……」 「…………」 俺がザックリとした説明をして隣を見ると、藏元は浮かない顔をしてした。 「……藏元のほうこそ、大丈夫か?」 「……え?」 「つーか……そうだよな。助けてくれて、看病してくれて、ずっと心配かけて……絶対藏元のほうが疲れてるじゃん」 「ぁ……いや、俺は」 「……取り敢えず、ちょっと休んでいけば?」 丁度到着した俺の部屋のドアを開け、そんな提案をした。

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