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布越しに触れてきたその感覚に、藏元のシャツを握る。なぞるようにゆっくりと、何度か上下に動いた。
藏元の肩に置いていた手の甲に、額を乗せて俯く。目を閉じて、極力反応しないよう努める。
「っ……」
変な声が出そうになり、唇をキツく噛む。
「……大丈夫?」
「……っ……」
何がだよ。平気かって?平気なわけあるかよっ……!俺だって男だよっ……!
藏元に引かれるのだけは避けたいと、より強くシャツを握りしめ必死に声を殺す。
こんなことになるなんて予想外だったけど、人間って単純だ。甘い快感に体が反応し始めている。
浅い呼吸でどうにかやり過ごしていたとき、藏元が少し力を入れて触れてきた。
「ンっ……」
「…………」
さ、最悪だっ……!聞かれたかっ!?一瞬だったからセーフ??
顔を外に向けたまま藏元の反応に怯えていると、首筋に柔らかいものが当たった。
ちゅっ
音を立てて首筋にキスをして、そのまま上に滑ってきた唇は耳元まで来ると、掠れた声で囁いた。
「……触れるよ」
「……っ……ぁ、待っ」
布越しでもかなり危なかったのに、この先は堪えられる自信がなくて、待ったをかけようとしたが遅かった。
長い指は隔てていた布の下へと潜り込み、熱を持った性器に直接触れてきた。
「やっ……やばいって……」
「気持ち悪い……?」
「そ……じゃな、て……俺が……」
「何?」
「……こっ……声出ちゃう……から……」
「……」
顔が熱い。体が熱い。どんなに抵抗したって、こんな状態になってしまえば隠しようがない。だから、自白する。
もう耐えられる自信がない。
「……じゃあいいよね」
「……は?ぁんっ……!!!?」
根元から先端まで擦り上げられ、無防備に声を上げてしまった。
「っ!!!おまっ……ぅ、あぁっ……待っ、ひっや……!」
「大丈夫。声、出して」
「んぅぅ……はっ、ひ……」
首を横に振って主張しても、止めてもらえない手。刺激をひたすら与えられ、藏元にしがみつく。
それなのに藏元は、我慢するなと優しく呟いてきて、まさに悪魔の囁きだ。
「気持ちいい?」
「ん、ンっん」
そんなことわざわざ聞かなくたって、直接触れている藏元は分かっている筈だ。
声は必死に抑えようとしてるのに体は正直に反応して、擦られる度に先端から溢れた液の音が厭らしく響いた。
くちゅ じゅ ちゅくちゅ
「……可愛い」
手は動かしたまま、藏元は間近でずっと俺を見つめてくる。
こんな醜態、恥ずかしいのに、見られたくないのに、しがみついている俺じゃどうしようもなくて、その視線にすら耐えるしかない。
「うるさっんぅ、あっ」
くちくち くちゅ
「イキそう?」
「ふぅっ……!」
もう無理。イく。何もかも限界。
「っく、から……トイレットペーパぁ!!」
「いいよ。このままで」
「はぁ?!ん、むりっむり!ぁやっくら、」
人の話は一切聞かず、より手を早める藏元に焦慮する。軽く爪を立てられ快感の波が一気に押し寄せてきた。
「もっ手、はなっ……!」
「……成崎」
「?ぅんっ」
突然塞がれた唇。浅い呼吸すらも藏元に奪われ、ただ藏元にしがみついた。
口腔は舌でいいように掻き乱され、性器は容赦なく絶頂へと誘われる。
「うぅっん゛んンっーー……!!」
肩を強張らせ、塞がれた口腔に籠る声。両太腿が痙攣したように震えた。
ちゅ ちゅぷ
「んっ」
ちゅ
「ン……ふぁ……」
「……ふっ……イったね」
「……ハ……ハァ…………んぅ……最悪……」
「……そう?」
何故か嬉しそうな顔の藏元を一瞥して、トイレットペーパーを巻き取る。それを藏元の手に被せ、出してしまったものと一緒に拭う。
……うわマジで最悪。俺、人の手に……
「……ごめん」
「?何が?」
「手洗って」
「ぇ?」
「今すぐ、念入りに、隅々まで、手荒って」
「ぁでも成さ」
「洗えっ!」
「ぁはい」
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