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翌日。朝8時28分57秒。 昨日藏元に、東舘さんのこと、千田のこと、起こった衝撃の現実を洗いざらい話した。 ……まぁ、そのせいなんだろうけど。100%その影響なんだろうけど。 「……何してんの」 「……お迎え?」 「いらないです」 ガゼボからいつも通り登校したら、昇降口に、藏元がいた。そして当然、その回りには藏元ファンが集まっていた。 こんな時間帯にここにこんなに大勢いたらまずいんじゃないのか。みんな俺のせいで遅刻……いや、藏元のせいで遅刻だぞ。 「藏元様優しいーっ」 「成崎くん超羨ましい」 「あれは親友の特権だよねぇ!藏元様の友達思いってほんとかっこいいっ!」 回りのファンが、呑気に、凄い盛り上がっている。このギリギリの時間帯にそぐわないこの光景に呆気にとられていた俺はすぐにハッとした。 「……やべっ!走れ藏元!」 「ぇ何?」 「あと数十秒でチャイム鳴る!」 「嘘!?」 「お前のせいだぞ!」 「なんで俺!?ギリギリに登校する成崎が─」 「俺はちゃんと時間見て登校してるから!お前のドッキリのせいで何秒か無駄にしたんだよ!!」 階段を登っていると、鳴り出したチャイム。廊下を駆け足で進む。 あーもう残暑のなか走るとか何の罰ゲームだよ。しんどい。朝からもう帰りたい。体力無駄にした。藏元のせいだ。馬鹿ヤロー。 「成崎顔に出てる」 「うるさい」 「ほらあと少しだよ」 チャイムの最後の一音と共に、教室の扉を開けた。 「はぁーーーーっギリセーフ」 「間に合ったね」 「馬鹿藏元のせいだ馬鹿」 「はいはい」 俺の暴言もさらりと受け流す王子様は、汗のひとつもかいていない。俺は既に汗かいてるのに……何故こうも違うのよ? 「成崎、疲れちゃった?」 「そうだよ。藏元のせいで大事な体力使ったよ」 「おでこ汗かいてる」 楽しそうに笑ってポケットからハンカチを取り出すと俺の額に当ててきた。 「これから体力づくりもしよっか」 「やだよ。藏元と体力づくりとか、絶対レベル違いの運動に決まって……」 特に何もせず大人しく汗を拭いてもらっていた俺は、回りの空気が違うことに気づいて視線を周囲に向けた。 目を見開く者、口元を抑える者、顔を赤らめる者、微笑みを浮かべる者……と、かなりの視線を集めていた。 「ハァアンカチくらい持ってますっ!!」 勢いよく顔を反らして藏元から数歩距離を取った。嫌な目立ち方をしてしまった気がする。 「今日も絶好調だねふたりとも」 「は?」 「何?」 クラスメイトの一言に、俺と藏元は一緒に振り返る。 「朝イチから“ふたりの世界”じゃん」 「君たち仲良すぎ。あやしー」 「藏元くん成崎くんにだけずるい!不公平だぁ!」 あー……ほらね。 面倒なことになったと腕を組んだとき、教室の扉が開いて担任が登場した。ナイスタイミング、と思ったのだけど…… 「おーっす、……てなんだ?何の騒ぎだ?席に着けー?」 「だって先生っ、ふたりがまた」 「なんだ?漸く付き合い始めたのか?」 「!!?」 ズッキーの悪ふざけの冗談に、俺は心臓を吐き出してしまうんじゃないかと思った。 「ところで成崎。暗幕どうした」 「……え?」 「?暗幕だよ。昨日職員室で頼んだのに、戻ってこねぇから」 「…………あっ!!!」 「珍しい。忘れたのか?」 「ぁ……いや、取りには行ったんですけど……」 暗幕なんて一瞬ですっ飛ぶ程のことがあったもので…… 「……今日改めて行きます」 「おー。頼むぞー」 ズッキーが教卓の前に立ち、皆が席に座り始め、藏元が俺から離れたとき、教卓の扉が開けられた。 「おはよーお邪魔ー」 「!!!!!」 その緩い声の主にクラスメイトたちが大歓声を上げた。

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