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運動大好き、体力バカの髙橋は俺の腕を引っ張ってぐいぐい廊下を進んでいく。 日々の生活スタイルが真逆だし、髙橋の早歩きは俺にとって駆け足だった。 転けないように必死についていき、辿り着いたそのドアに、先程思った考えを即改めたいと思った。 「髙橋っす!入ります!」 ノックして入った髙橋はそのまま俺も引き入れた。 「……おぅ、珍しいな。お前が自分から昼休みに来るなんて」 「あっ!仕事はまたあとで!」 「はぁ?お前の仕事どれだけ溜まってると思ってんだ。いい加減片付けろ」 その大人びた声は、しっかり者にふさわしい声だ。……にしても、昼休みまで仕事してるんだ。本当、忙しい人だよな。 「あ?……後ろのやつは?」 「ぉ、あれ?なんで隠れてんの?」 髙橋の背後に意味もなく隠れていた俺は隣に引っ張られた。 「……成崎。」 「……先に言っときます。決して、仕事の邪魔をしに来たわけでは、」 書類を捌いていた手を止めてこちらを見つめる我が校の生徒会長、宮代さんに第一声として弁解を述べた。 「ほんとに珍しいな。成崎が生徒会室に近付くなんて」 ははは、と爽やかに笑った宮代さんが神々しい。俺がポカンとして宮代さんに見とれていると髙橋が実は!と声を張った。 「週末、暇すか!?宮代先輩!」 「週末?」 「ちょおおっ!髙橋!それは駄目だって!」 予想通りの展開になって、慌てて俺は髙橋の止めに入る。 宮代さんは他のアイドル様みたいに見せ物になるのは嫌がる人だし、何より超多忙な身なんだ。それに、“ひとり誘う”のひとりがこの人なら、影響力は相当だ。こんなヤバいイベントに巻き込むわけにはいかない。 「誘ってみるくらいいいじゃん!一か八か!」 「そういうことじゃなくて、」 「髙橋、何かあるのか?」 「っ……」 宮代さんんンっ……俺の配慮がぁ……! 「はいっ、野球やるんすよ!成崎と!」 「……へぇ。成崎が髙橋と……フ……そんなことあるのか」 笑いを堪えるように口元を隠して呟いた宮代さんに、目を細めた。 「……今、絶対試合にならないだろ、とか思いましたよね」 「……ちょっとな。」 「かちーん。俺だって、平均並みには出来ますよ。他のメンバーが強いし、試合くらい出来ますよ」 「ふふっ……あぁ。そうだな。チームゲームだからな」 「ちょ、馬鹿にすんなよ生徒会長様」 他の参加メンバーを聞いたときから全くやる気起きなかったし、足を引っ張らないためにもベンチでずっと見てようとか思ったけど……腹立ってきた。俺だって少しくらい出来るっての。 「あ、えっと、先輩!それで、良かったら先輩もどうですか!?」 「……ごめんな。文化祭の企画書とか予算とか、その日は色々片付けようと思っててさ。……つーか、お前も生徒会だろ」 「ぁ、え、あははー!じゃあ終わったらやります!」 ……そうか。髙橋がサボるから余計宮代さんが忙しいのか。……東舘さんもサボってんだろうな。 でも取り敢えず、宮代さんをこの変なイベントに巻き込まずに済みそうだ。 「でも残念っす!宮代先輩が入ればすっげぇ試合になると思ったんですけど!」 「すげぇ試合?」 「はい!成崎とスポーツで遊べるし!」 「それは奇跡だよな」 「藏元とも今度は野球で遊べるし!」 「……藏元?」 「東舘先輩も参加してくれるっていうし!」 「……何?」 髙橋は、全く気付いていないだろう。自分が地雷をばら蒔いているということに。 俺は踏みたくないので、そこに突っ立って黙っていた。これが今出来る最大の防御だ。 「藏元と東舘先輩は、個人的になんかの賞品かけて試合するとか!」 「……賞品」 洞察力の凄い宮代さんは俺を見た。 冷や汗が、止まらない。苦笑いで視線を横に反らした。 「だから俺も個人的に宮代先輩に、クラスマッチのリベンジしたかったんすよ。競技は違いますけど…………でも、それはまた今度、」 「髙橋」 退室しようと歩き出した髙橋を、宮代さんは呼び止めた。 書類をトントンと整えて、傍にあった処理済と書かれた箱に入れると男前の顔を上げて微笑んだ。 「面白そうだ。やっぱり俺も参加していいか?」

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