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「まじすかっ!?」
「まじすか……?」
同じ台詞を口にするも、俺と髙橋の言葉にはかなりの温度差があった。
何故だ。何の得があって、宮代さんはわざわざこんなイベントに……
「嬉しいっす!ぜひぜひ!」
「……はい、はいはいっ」
ただ純粋に喜ぶ髙橋の肩を抑えて、宮代さんに向かって手を挙げた。
「あの……髙橋の他に、東舘さんと藏元も出るんすよ?」
「あぁ。今聞いたよ」
「……えー、と……」
東舘さんとは色々あったせいで微妙な空気だろうし、藏元は宮代さんまで警戒するようになってるし……
「……か、観客がめっちゃいると思うんすよ」
「…………」
「宮代さん、そういうのあんまり好きじゃないんじゃ……?」
「……あぁ。煩いのは嫌いだ……けど」
さらっと本音を溢した宮代さんは背凭れに寄りかかると腕組みして強気な笑みを浮かべた。
「でも、なかなか出来ないだろ。本気の試合」
「!?」
本気!?今宮代さん本気って言った!?そんなやる気出してんの!?なんで!?
「よっしゃー!なら俺も本気で宮代先輩のこと倒しますよ!」
「待って!待ってくださいよ!」
「なんだよ成崎ぃ」
「3対1になる可能性だってあるでしょ!!チームのパワーバランスも考えて誘わないとっ」
「じゃあ……そうだな。チーム分けについて俺から提案してもいいか」
参加を阻止するためぐだくだと騒ぐ俺とは対照的に、スマートに話を進め始めた宮代さんは、流石生徒会長といったところだ。
「東舘と藏元、俺と髙橋……みたいな感じで、身体能力が近い者同士が別々になるよう、二人一組でじゃんけんすればいいんじゃないか?」
「あーっ!それならいけますね!そうしましょう!」
「……」
あーあ……。改善策通っちゃったよ。そしてしっかり試合する気だよ。どうしたんだよ宮代さん。そんな遊び、そんなイベント、いつもなら興味ないくせに……。
「じゃあ先輩、週末、楽しみにしてますね!」
「あぁ。誘ってくれてありがとな」
「いえいえ!」
満足げに笑った髙橋の後に続いて俺も生徒会室を出ようとした……けど、納得いかなくて振り返る。
「知らないっすよ、どうなっても」
「何が?」
「俺は止めようとしましたからね……一応。……失敗したけど……」
「優」
口を尖らせてボソボソ呟けば、宮代さんは優しい王子様スマイルなる微笑みを浮かべていた。
「楽しもうな」
「…………は?」
……読めない。何を考えてるんだよ。ファンイベントになりつつあるものに自分から参加するなんて……ほんと、宮代さんらしくない。
「ちゃんと分かってるんすか」
「優の言いたいことは分かってるつもりだ」
「ファンめっちゃ来ますからね」
「それは……疲れるな」
「だから言ってるでしょ!」
「ははっ」
「笑えないっすよ!はぁーもう知らないっす!自業自得ですからね!」
大きくため息を吐いて生徒会室から退室した。
あの宮代さんまでも参加するとなると、当日は一体どんなことになってしまうのやら……
その不安で頭がいっぱいになった俺は、宮代さんの真意なんて全然分からなかった。
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