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そして、じゃんけんした結果……
「……勝っちゃいました」
水谷くんは自分の掌を見つめて呟いた。
その言い方、実は負けたかったのか?だから何出してほしいか聞いたのに……
「俺が勝ったことにしましょうか?」
「!いえ、そういうことではないので」
「……大丈夫ですか?」
「成崎先輩は、ほんと、お気になさらず」
「…………」
なさらずって……本当に大丈夫かな。
「成崎どっちだったー?」
「あー……俺負けたー」
「!」
「!?」
髙橋の問いかけに素直に答えれば、ザワつくイケメンたち。東舘さんが藏元を睨んだ。藏元は冷ややかな目で見つめ返した。
そんなふたりを全シカトして、宮代さんは肩を回した。
「成崎は藏元と同じチームだな」
「そうですか……宮代さんはどっちすか?」
「俺は東舘と同じチームだよ」
「えっ……まじすか……」
「なんだよ成崎その反応はー!俺が成崎と同じチームなんだぞー!不満かぁ!?」
俺が微妙なリアクションをすれば、それに直ぐ様髙橋が反応してきた。
「不満ではないけど…………勝てんの?」
「最初から結果が決まってる勝負なんて無いんだぞ!」
「……うん。そうなんだけどさ」
言ってることはスポーツマンぽくて、名言的な格好良さもあるし、キメ顔するのもご自由にどうぞなんだけどさ。
「東舘さんと宮代さんだよ?……3年だし……」
「学年は関係ない!!」
「……ただの3年じゃないよ。あのふたりだよ」
「……関係ない!」
ぁ、一瞬詰まったよ。
「それと、」
「まだあるのかよ?」
「……俺がこっちに入るんだよ?」
「………………ちょっと不利かも」
「おいこら。そこだけ素直に認めるのか」
「はははは!冗談だって!楽しもうな!」
楽しめる状況になればいいけど。俺のせいでこっちのチームは悲惨なことになる予感。
「……じゃよろしくお願いします」
「ぁはい。水谷くん、何かあれば言ってください」
「ふっ……大丈夫っすから」
迷惑をかけてしまった水谷くんと挨拶をして、その背中を見送る。俺と同じチームになる人たちから怒られないといいけど……。
「はぁ……」
「成崎」
「おーっす藏元ぉ」
隣に来た藏元は、去っていく水谷くんの背中を見つめると、グローブで口元を隠した。
「いい人だったの?彼」
「あ?あぁ、うん。めっちゃいい人。だから余計俺とじゃんけんとか可哀想で……何もないといいけど」
「へぇ」
「ちょっと仲良くなれた気がしてたんだけど、これで恨まれたら水の泡だよな」
「仲良くなったの?」
「うーん……俺の自己満か?……いや、硬い表情だったんだけど、笑ってくれたからさ、ちょっと嬉しかっただけ」
「……へぇ」
「まぁこの試合終わったら関わること無いだろうけど」
あっちは間違いなくアイドル様候補。俺とはほとんど無縁な人種だし、さっきまでの数分の会話で笑ってもらえただけで充分なのかもな。
自己解決した俺の耳に、藏元はグローブで隠したまま口元を寄せてきた。
「あっちのチームに入りたかった?」
「……ん?」
「楽しかった、仲良くなりたいって、目の前で見せつけられるとちょっと悔しい」
「なっ……み、見せつけてなんか……」
「俺のことも見てよ」
「っ……!?」
藏元の目が、あの綺麗な目が、楽しげに、悪戯っぽく、俺を映している。
「ど、どうせ……」
「?」
どうせ、試合が始まったら、藏元に目がいってしまう。水谷くんの笑顔は確かに嬉しかった。でも、藏元の笑顔、存在は誰とも比べられない、俺にとって一番……
「お前には魔力があるし、それ使うんだろ」
「??魔力?」
藏元の魔法の防ぎ方なんて、俺は知らない。
小首を傾げた藏元の背中を思いきり叩いた。
「ぃ゛!?」
「せいぜいキャーキャー言われてろ!」
捨て台詞を吐いて、藏元の魔法領域から脱出した。
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