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取り敢えず、無事にチームも決まりそれぞれ準備体操を始める。 グラウンドはいつの間にか、想像以上の観客に囲まれていた。崇拝するアイドル様の名前を呼んでは全力で応援するその生徒たちの熱気に、俺は今にも殺されそう。 こんなに注目されてるスポーツなんてやったことないよ……アイドル様の足引っ張ったら即、死刑確定だろうな。なるべく存在感消しとこう。 屈伸をしながらこれからの試合の対策を考えていると、フッとその場にふたりの影が落ちてきた。 「成崎」 「……ん?」 「最初、あっちが攻撃なっ!」 「……ぁ……あそう」 別に俺には関係ないと思うけど。 「成崎は、どこの守備に入りたい?」 「……え?」 「あっ。お前、試合どころかボールに触る気すらなかっただろぉ!」 「わーばれちゃったー」 髙橋のピンポイントの指摘に、棒読みで返した。 だってそりゃそうだろ。こんなスポーツマンたちの試合に俺なんかがちゃんと参加できる筈無いだろ。名前だけ参加して、後は邪魔にならないよう隅のほうに…… 「完全に逃げることは無理だろうね」 「??」 「だよなぁ!」 藏元の呟きに髙橋が同意した。 「素振りとかキャッチボール、……見る感じ、やっぱり凄いね。会長と副会長」 「ほんとそれ!わくわくしてきた!」 ……それは、運動得意なやつしか分からない感覚?俺からしたら回りのみんな全員、早いし早いし早いから、結果全員すげぇってことになるんだけど。 「だから、ある程度は狙われると思うけど……」 「…………あ。そういうことか」 藏元の意味有りげな視線に、俺は漸く合点がいって手を叩いた。 「俺が穴ってことか。だから守備どうするかってことか」 「……えっと……半分くらい正解」 「遠慮すんな藏元。さっき髙橋にハッキリ、俺は不利になる要因だって言われてるから」 「おい成崎!あれは冗談だってぇ!ごめんってぇ!」 謝罪のハグをされて、息苦しさと暑さに試合開始前なのに体力を消費する。藏元は眉尻を下げて笑って、あのねと柔らかに呟いた。 「あの人は多分、“成崎と遊ぶ”つもりなんだよ」 「ん?」 「他の参加者のことは二の次なんじゃないかな」 「……ん?……ぇ、どういうこと?だって、野球って団体競技じゃん」 「……うん。だからね、」 「?」 「成崎とふたりきりになんか、俺がさせない」 「…………は?」 「絶対阻止するから」 …………は? 超真剣な藏元の顔は、それはそれは格好よくて、見惚れるほど綺麗で、その真っ直ぐな瞳は毎度のことながら俺の視線を捕らえて離さない。 ……この子の言っていること、さっぱり分からないままなのだが。

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