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「だからって成崎、今盛り上がるのはそっちじゃないだろ」
「ぁ……」
ごもっともなご意見に、小さく頭を下げた。
「だから、何の話をしてるんですか」
「ん?」
ムッとした顔で藏元が宮代さんを見つめた。宮代さんはすぐに笑顔を作ると、ポンと藏元の肩を叩いた。
「俺と成崎の話だから気にするな」
「…………」
……宮代さん、気にするどうこうじゃなくて、その話に入っていけないから藏元は拗ねてるんだと思うんですよ……。
全然フォローになっていないとガッカリしていると、宮代さんは俺たちのところに来た本題を思い出した。
「ぁそうそう。俺怒られちゃったからさ、成崎のチームに入ることになった」
「え?こっちにですか……?」
「怒られた??……宮代さんが?」
「あぁ。髙橋に」
「髙橋にぃ?」
藏元と俺は目を見合わせた。優秀で大人で頼れるお兄さん的存在の宮代さんが、天真爛漫で自由奔放な元気少年髙橋に怒られるなんてあり得るのか?
「……なんで?」
普通に疑問でそのままの言葉を呟けば、宮代さんの後ろから髙橋が現れた。
「当たり前だろ!宮代先輩にはやる気を出してもらわないとリベンジにならないっ!!」
「……あー」
「成る程」
「バット振る気もないなんてあり得ない!がっかりっすよ!」
「いや……振ってはいたよ」
「うん、打たれちゃった」
宮代さんに向かって怒鳴る髙橋に、弛いツッコミを入れる。こんな光景、今後なかなか見られないだろうな。
「だから!東舘先輩と同じチームが嫌なら俺と替わりましょうってなったんだよ!」
「……それで、他のみんなは了承……するか。あなた方の意見ですもんね」
なら俺は受け入れるだけっすよー
「藏元は、それでいい?」
「?うん。問題ないよ」
「……じゃあ、宮代さんと藏元」
「何?」
「なんだ?」
「仲良くしてくださいね」
「……やだな成崎。誤解生みそうな言い方しないでよ。会長のこと、嫌ってなんかないよ?」
「藏元とはまだそんなに話したこともないし、これといった感情は特にない」
「…………」
これはツッコむべきなの?素のあなた方の笑顔は、誰もが見とれる華やかで爽やかで神々しい笑顔なのに、今、互いを見つめるその目が、全然笑ってないんだよ……。
藏元は、東舘さんの件以来、宮代さんのことも警戒してるってのはなんとなく分かるけど……。宮代さんが何故、ちょいちょい藏元を煽るのか分からない。
「ぁ、あの、俺、そろそろベンチ行きますね」
「ぁはい」
アイドル様たちの微妙な空気感のなか、恐る恐る手を上げて水谷くんはこの場を離れる意を伝えてきた。
「成崎先輩」
「はい?」
「また、あとで」
「?はい」
微笑んで手を振ってきた水谷くんに、こちらもお辞儀で返す。
驚くほど、理想の後輩って感じだ……
去っていく水谷くんの背中をぼんやり見つめていると、いきなり引かれた肩。
「ぅお!?」
「俺たちも行くよ、ベンチ」
「……拗ねてる、よね?」
「……」
「話題に入れなかったから?」
「……」
「……ぇ、ベンチにすぐ行かなかったから?」
「……」
「でも藏元だってこっちに来たじゃん」
「……」
聞いても無言で俺を引っ張っていく藏元。少しだけ下唇を噛んでいる藏元……可愛い気がする。
そんな俺に、横を歩いていた宮代さんがクスクス笑いながら呟いてきた。
「成崎、ちゃんと考えて言ってるか?」
「どういう意味すか」
「……いや、いい」
「は?……ちょ、宮代さん!なんか知ってるなら教え─」
「継くーーんっ」
「!!?」
けいくんっ!?
宮代さんをそう呼ぶ人なんて超希少で、むしろ命知らずで、俺は言いかけた台詞を引っ込めて、その声の方へ振り向いた。
観客席、ガッチリした男子生徒に囲まれて、ボディーガードに守られたセレブみたいなその人はこちら、というより宮代さんに手を振っている。
「応援してるからねぇ!頑張ってぇっ!」
その人は、女性と言われても納得できるくらい中性的な顔立ちの綺麗な人だった。
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