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「髙橋っ……違う、えっと、今のは」 「……何が……違うんだよ……」 切なく、震える声で小さく呟いた髙橋に俺は何も言えなくなった。 どうしよう……髙橋を傷つけた…… 無力にも、どう話したらいいのか分からず俺はただ俯く。そんな俺の前に藏元が立ち髙橋と向き合った。 「髙橋」 「……何」 「見た通りだよ」 「!?なっ、藏元っ」 「隠しててごめん」 「っ……!」 「……藏元、なんでそんな」 「見られたのに、これ以上嘘はつけないよ」 「……」 「……れ……が、……俺が……」 藏元の正論に反対なんかできなくて口を紡ぐと、震える声が必死に言葉を発してきた。 「俺が告白、したとき……もう……?」 「……ううん。あのときは何も」 優しく微笑んで呟く藏元、その一文字一文字が謝罪を含んでいる気がした。 「……そっかぁ」 ボロボロと大粒の涙を拭いながら髙橋は笑った。あの元気印の髙橋を、泣かせてしまった。 「思わないようにしてたんだ、実際」 「?」 「藏元は、……成崎にだけ特別だから」 「……は?」 「友だちだからって思い込もうとしてたけど……やっぱりそっかぁ……」 「……ん?ぇ、ちょっと待って。やっぱりって何」 「藏元、かなり前からだろぉ?」 「いつからかは……ちょっと俺も分からなくて……気付いたら好きだったんだ」 こいつら、何恥ずかしいことベラベラ言ってんの!てか、フッた人とフラれた人で、なんで穏やかに恋愛トークなんてできるの!?普通気遣うでしょ!? 「俺……ほんとの事言うと……まだ藏元のこと好きだったんだよなぁ」 「……ありがとう。……でも、ごめん」 「……うん。藏元のこと好きだから、藏元が本当に好きなのは誰なのか、ちゃんと……分かってるよ」 目元をゴシゴシと擦る髙橋は、明るく振る舞ってはいるけど肩が震えている。俺はこういうとき、何をすべきなんだろう。 「成崎は恋愛経験少ないと思うから」 「……な、なんだよ……」 「藏元、頑張ってな!」 「……うん」 「…………」 泣きながら笑う髙橋を見て、俺は後悔が滲む。 「……髙橋、さ」 「なに?」 「……俺……もう髙橋と……」 「成崎、俺はこれからも友だちっ」 「……」 「俺に遠慮とかして、藏元のこと傷付けんなよ!」 「……」 ……髙橋は、凄くいい奴。優しい奴。そんな奴を泣かせてまで、俺が藏元といることは正解なんだろうか。 「……」 「……はぁあ!!びっくりしたぁ!まさかこんな感じで知っちゃうとはなぁ……」 「ごめん」 「……ううん。ただ、幸せになってくれよ。絶対に」 「……ありがとう、髙橋」 「…………ごめん」 感謝した藏元とは正反対に謝罪した俺は間違いだっただろうか。分からなくて、髙橋のことを見れなかった俺は俯いたままだった。 またそれが、厄介を招いてしまうのだった。

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