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思い出すだけで赤面してしまいそうな昨日から一夜明け、充分に睡眠も取れた俺の筋肉は痛みもすっかり解消していた。
8割藏元のマッサージのおかげだと思うけど。
それよりも、学校でどんな顔して藏元に会えばいいんだろう……。
いつも通り早朝に読書時間を確保したものの藏元への態度に悩んでしまい殆んど読書出来ないまま、ギリギリの時間に登校した俺は昇降口に立っていた藏元にため息を吐いた。
けど、恥ずかしいから目会わせられない……。
……あれ?いつもより回りのファンが少ない?まぁ、いることには変わりないんだけど。
「目立つから、待ってなくていいって」
「今日は体育館でバスケしてたから。時間帯が丁度あっただけだよ」
「……あっそ」
じゃあ一緒にやってた奴等はどこだよ?もうとっくに教室に行ったんじゃないの?
そう思ったけど、何を言っても待っていたと認めそうにない藏元なので、俺はそのまま呑み込んでロッカーを開けた。
「…………?」
「……どうしたの?」
「……いや……」
自分のロッカーを開けたまま、周囲のロッカーを確認する。
……俺のロッカー、だよな?
「……成崎?」
「…………あーこれ……」
「?」
「……俺ちょっと、来客受け付け行ってくる」
「……え?」
「先に教室行っててくれる?」
「なんで?来客って……?」
「藏元」
「……」
「頼むよ」
「……分かった」
俺の意見を受け入れ立ち去る藏元を見送り、俺は外履き用の靴を手に持ち来客受け付け窓口に向かう。
藏元には多分今日中に……早くて教室に行った瞬間バレるだろうけど……取り敢えず俺だけで考えを整理したい。
「おはようございます」
「おはようございます」
来客受け付け窓口にいた事務員の男の人に声を掛けると爽やかな笑顔で応えてきた。
「すみません、ちょっといいですか」
「はい。どうされました?」
「来客用のスリッパをお借りしたいです」
「?……上履きは?」
「寮に忘れちゃって」
「そうですか。では今出しますので、お待ちください」
「すみません、ありがとうございます」
事務所の奥に消えた事務員を待ちながら、考える。
上履きが無くなってる……これは1年の時やられた理由と同じ理由か?いや、そこまで確実なものでもない気がする。あと数秒でチャイムが鳴るから周囲には生徒が誰もいない。反応を見るわけにもいかないか。
……あ、さっき、ここに集まってた藏元のファンがいつもより少なかったな。
つーことは、これは1年の時とは違うな。
「……藏元を先に教室に行かせたの失敗だったかなー」
「失敗とは?」
「ぁいえ、すみませんありがとうございます」
いつの間にか受け付けに戻ってきていた事務員に独り言を聞かれ、俺はスリッパを受け取るとその場からさっさと逃げた。
チャイムが鳴り出した校内を履き慣れないスリッパを履いて歩く。
階段を昇りながら、教室で起こっているであろう騒ぎと、藏元に何をどう説明しようかを考える。
というかまず、誰がどっちなのか、そこが分からないとどうにもできないか。
面倒だなとため息を吐きつつ教室の扉を開ければ、案の定というか、教室にいた全ての人の視線がこちらに向けられた。
皆、俺の机を囲んで突っ立っている。藏元が、苦悶の表情でこちらを見つめている。
「……成崎……」
重々しくて暗い空気と、今それにピッタリな藏元の辛そうな声。
そんな状況に、俺は余りにも不相応な声と反応を返した。
「だよね」
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