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取り敢えず、2Bの人たちは変わり者だけどいい人たちで味方だってことが分かった。だから2Bの中にいるときは特に気を張る必要もなくて、授業中は今まで通りの日常だった。 でも、学校生活は教室のみで終わる筈もなく、それなりに覚悟しながらやらなければならないこともある。 「成崎くん、あとで職員室にプリントを取りに来てください」 「はい」 現状がどうであれ、係の仕事は当然ある。 先生に呼び出された俺は、放課後職員室に向かうことになった。が、それを聞いて黙っている藏元ではなかった。 「俺も行く」 「……職員室に行くだけだよ」 「職員室前まで一緒に行く」 「ありがとう心配してくれて」 藏元が虐めを心配してくれているのは分かる。でも俺のために自分の生活を変えてほしくない。 「でも、藏元にも用事があるだろ。……ほら、運動部に顔出すとか」 「俺にとって、成崎が最優先だから」 「……」 くっそ。イケメンめ。 「じゃ、じゃあ……来てもいいけど、」 「うん?」 「反応するなよ」 「……?」 「何を見ても全部、スルーしてくれ」 その提案に藏元が納得するなんて思ってない。だって、頑固だし。 でも一応、それが最善策なんだって、駄目元で言っておくことにした。 教室から出て、職員室に向かう。すれ違う生徒たちの視線は、冷ややかなものばかりだ。 「……ここで待ってるね」 「おぅ」 職員室の扉の前で藏元は少し不満げに呟いた。さすがに職員室内では何も起こらないと思うぞ。 「……失礼します」 職員室に入って、俺を呼んだ先生の元へ行く。その先生はズッキーと違い、配布するプリントをすぐに取り出しては俺に渡してきた。机の上が整理整頓されているから物の位置を把握しているんだろう。 廊下で藏元を待たせているので、先生と一言二言で会話を済ませると早々と職員室を出た。 「お待……」 出てすぐに声をかけようとしたが、それを途中で止めて身を引いた。藏元がファンらしき3人に囲まれて談笑していたのだ。 ……待っていたほうがいいんだよな? 数歩離れて藏元を待っていたら、突然視界に入ってきた人影。それが誰なのか認識する前に思い切り肩をぶつけられて、持っていたプリントが紙吹雪のように廊下に舞った。 「やっべ」 「!!成崎っ!」 預かったばかりのプリントを無くしたらまずいと拾い集めようとしたら、藏元が案の定反応して駆けつけた。 「大丈夫!?……あいつらっ」 「待って」 ぶつかってきた人影は走り去っていき、今見えるのは遠くにある後ろ姿のみ。藏元はそいつを追いかけようとしたが、俺が藏元の腕を掴みそれを阻止した。 「成崎っ今なら捕まえられるのにっ!」 「まぁ藏元の足なら余裕だろうね」 むしろ、藏元から逃げ切れるやつなんて片手で数えられるくらいしかいないんじゃない? 「それより、プリント拾うの手伝ってくれる?無くしたら2Bの皆の授業に支障が出るから」 「……」 かなり不満そうな顔で、それでも藏元はしゃがんでプリントを拾い始めてくれた。 そこへ先程まで藏元と喋っていたファン3人がやってきて、意外にも一緒に拾い集めてくれた。 「僕たちも拾うねぇ」 「ぁすいませんありが」 「藏元くん大丈夫?」 「ぁうんありがとう」 ……なるほど。俺の存在は見えてないのか。 「はい!藏元くんっ」 集めたプリントも何の迷いもなく藏元に渡していく3人。 あーはいはい慣れたもんですよ透明人間。だから心のなかで言っておくよ。アリガトー。 良いことしたーみたいなルンルン気分で立ち去っていく3人を半笑いで見送る。 「……ごめんね、俺が立ち話なんかしてたから」 「阿呆。スルーしろって言っただろ」 プリントを手渡して謝罪してくる藏元の頭を、プリントでポンと叩いた。

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