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俺の腕を掴んだままの塚本様は、俺を引き摺るようにして何処かに向かって歩きだした。 「ぃ゛痛いです!ちょっと……!?聞こえてます!?」 「軟弱だな。少し力を入れれば、簡単に折れそうだな」 「!!?冗談、ですよね!?」 「冗談にしたいなら、抵抗しないで大人しくついてこい」 ぉお、鬼だっ……鬼畜だぁっ!! 俺の腕は無傷じゃ済まないだろう。良くて痣になるだろう。力も強いし、歩くスピードも速い。こっちに合わせるってことは一切無いのね。 「今、俗人どもが話している話は、本当の話なのか?」 「俗人……?話?」 腕をもぎ取られないように駆け足で塚本様を追いかけながら質問を繰り返す。 「髙橋 久道が負けた相手は、お前なのか?」 「……ぇー、と……負けたって表現は……いかがなものかと……」 「……あぁそうか。そこ重要か。お前からすれば、勝負にすらならなかったのか」 「いやそんな言い方っ……」 やけに突っかかってくる言い方するな。なんでこの御方がこの件に文句をつけてくるんだ? この御方は色恋沙汰には全く…… 「あ」 「あ?」 “髙橋 久道” そうだ。その呼び方で思い出した。その独特の呼び方。あの時、髙橋と一緒にいたエレベーターホールで背後から聞こえた声だ。 だから、聞き覚えがあったんだ……! 「なんだ」 「……な、なんでも」 「ほぉ」 「ぃでででででっ!!折れる!もげる!砕ける!!」 ギリギリと強められる塚本様の手を空いている手で掴み、なんとか離してもらえないかと踠いてみる。 「お前は本当に隠し事が好きなんだな」 「別にっそんなんじゃっ」 「じゃあドMか」 「は!?」 「それならそれでいい。どこまで耐えられるのか、試してやるよ」 「はぁ!?ちょっえぇ!?」 すんごい楽しそうな顔してますけど!?試すって一体何を!?拷問!?つーか俺Mじゃねぇよ!! 「なんなんだよっ…!!もう!あぁああの!!貴方様は髙橋と、御友人であらせられるのでしょうか!!?」 「……あ?」 俺の叫びに近い質問に、塚本様は歩みを止めて振り返った。その顔に恐ろしい笑顔はなく、何を言っている?と言いたげな表情をしていた。 「俺と髙橋……つーか髙橋を気にする仰りようでしたので……」 「……そんなつもりはない」 「もし、そうだったのなら、すみません。髙橋を傷付けてしまったのは事実です」 「違うっつっただろ」 掴まれた腕の痛みがまた少し増した。 「でも、勝ったとか負けたとか、そういう考えは一切」 言いかけた言葉は再び歩きだした勢いに妨害された。塚本様の歩き方1歩目から勢いがあるから、それに引っ張られる俺は内臓が揺れる感じがする。 「隠し事だらけで、ドMで、おまけに人の話も聞かねぇのか」 「あの、俺は決してドMなんかでは……」 「お前のこと、面白いと思ったが、少し違うようだ」 「?」 「少々、癪に障る」 「!?」 ヤバいじゃん俺!!それって生命に関わるじゃん! え!?それ死刑宣告!?

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