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「…………取り敢えず、成崎を奥の部屋に」
「それは宮代と、こいつだけってことか?」
「そうだ」
「それなら断る」
「塚本にその権限は無いだろ」
「何か勘違いしてないか宮代」
鼻で笑った風紀委員長様は、必死に距離を取ろうとする俺をあっさり引き寄せると首に腕を回してあとは力の微調整で絞めるだけの、所謂スリーパーホールドの体勢を取ってきた。
生徒会の皆様に見られながら、これから俺は首を絞められるらしい。
「俺はこの場所で成崎優の追い込みをやっているだけだ。お前のために連れてきたわけじゃない」
「それは俺に、成崎の尋問を見せつけるために来た、と聞こえるんだが」
「……あぁ。そうとも言うな。理解が早くて的確で、本当に助かるよ宮代」
愉快そうに、風紀委員長様はにっこりと笑った。宮代さんは言うまでもなくかなり苛立ちながら風紀委員長様を睨み付けている。
……宮代さんが風紀委員長様のことを良く言っていたことはなかったけど……まさかこんなに仲が悪かったとは……。
宮代さんがここまで“嫌い”を全面に押し出してくることも然う然う無いんじゃないか?
「……ということで、成崎優。話す気になったか?話せば解放してやる。黙秘ならこの状況が長引くだけで、宮代の機嫌も悪くなる一方だぞ」
「どこまでも最低だな塚本」
射殺すような視線で睨む宮代さんに、全力で謝罪したい。この状況を作った原因も、今後の成り行きも、全部俺次第で俺のせいなんだって痛感する。
大事にしたくなくて黙っていたけど、こんな状況になっている時点で既に大事か。そして首がどんどん締まってきてる。
これ以上の黙秘は、宮代さんにも迷惑かけるし、俺の生命もそろそろ危うい。
もう、諦めどころか。
「…………分かりました。お話しします」
俺が溢した一言に、首に回されていた腕は離れ再び腕を掴まれる体勢に戻った。
そして風紀委員長様は至極ご満悦なご様子で笑った。
顔が良いからこの状況なしでこの笑顔だったら、超素敵な人に見えるんだろうけど。本当に、最低最悪。性格悪すぎる。他人が抱える秘密を、自分の好奇心だけで手段を選ばずに追い詰めて暴くなんて下衆過ぎる。こんな横暴で残酷な人にキャーキャー言ってる奴等の気が知れない。
俺は天地神明に誓って、この人に好意を抱くことはないだろう。嫌いだ。
「……くくっ、その目」
「……はい?」
「随分な目で俺を見るようになったな」
……やばい。あからさま過ぎる視線だったか?ま、まさか、思考も読まれてたりして……?流石に、無いよね?
「なかなかに、愉しいなぁ?」
いや全然。この状況を楽しいと思ってんのはあんただけだよ、下衆風紀委員長様。
「“つくりもの”が壊れていくその感じ……なるほど。これは、かなりいい」
出た。“なるほど”。こっちは何も理解してないし納得もしてねぇよ。
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