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「おい、塚本」 「なんだ」 「成崎は話すと言ったんだ。いい加減、その腕を離してやれ」 「お優しいな、生徒会長」 ずっと同じところをかなり強い力で掴まれ続けていて痛くなってきていた。だから俺自身無意識のうちに痛みを和らげようと腕を摩っていた。 それにいち早く気付いてくれた宮代さんは俺を助けようとしてくれたが、この風紀委員長様がすんなり承諾する筈なかった。 「だが俺は成崎優と関わったことがなくてな。全く知らないから、信用もしてない」 「風紀に目をつけられるような生徒じゃない」 「さぁ?どうだろうな?こいつはかなり隠し事が上手いようだから、今まで俺たちの監視の目をすり抜けていただけかもしれないぞ」 俺は今まで目立たないように、普通に過ごしてきた。校則違反なんて悪目立ちは絶対しないようにしてきた。だから宮代さんの擁護は有り難いし、裏切ることにもならない。 ……ただ、今のところ風紀委員長様が俺に抱く印象は絶対いいものじゃないので、宮代さんの弁護は通らないだろう。 だって、虐められてたのに平然としてて、しかも助けを断った上にその理由をずっと黙ってた。 ドMか、何か企んでいるか、冷静に普通に考えてみれば、風紀委員長様の考えは当然だ。 ……まぁだからと言って、強引に他人の秘密を暴いていいとは思わないけど。 「宮代さん、すみません。俺の行動がかなりまずい方に転がっているだけなので……」 「……でも、成崎が痛みを与えられる理由はないだろ」 「それは……まぁ……」 “悪いことはしていない”前提で話してくる宮代さんに、信じてくれているんだって少し安心する。 「いーや!したしてないは関係ないでしょ!?手は離すべきだろ!!」 珍しく今まで口を挟まず黙って見ていた東舘さんが、ソファーの上に体育座りして挙手してきた。 「離す気はない。逃げられたら面倒だからな」 「なりちゃんは逃げねぇよ!ナメんな変態野郎!」 あの東舘さんに“変態”言われてるよウケる。 「お前に変態呼ばわりされたくねぇな」 「俺は快楽に従順なだけだよ。てめぇみたいな、他人を拷問して悦んでる変態と一緒にすんな」 どっちもどっちだ。 「……お前もそろそろ、黙らせてぇなぁ」 「やってみろよ。返り討ちにして啼かしてやるよ」 「いやぁとんでもなく気持ち悪いので出来れば別のところでやってほしいっすわー」 もう我慢の限界で呟けば、皆が目を見開いて見てきた。 東舘さんにはもう何度もこんな暴言吐いているので大丈夫だとして、風紀委員長様には内心めっちゃビビってた。最悪ぶん殴られること覚悟で。 でもそろそろ話を進めないと、俺の一番気になるところに影響が出始めてしまう。 「それが本性か?それとも強がりか?」 「そろそろタイムリミットなんです」 「……あ?」 いや、制限時間は疾うに過ぎている。 制限時間というより、限界時間。 「もう諦めて、お話ししますが」 「……」 「俺からも、お願いがあります」

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