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「……あぁ……例のやつか」 「?」 にやりと暗い笑みをつくった風紀委員長様に鳥肌が立つ。 藏元に対しても何かする気だろうか?藏元は何も校則違反なんてしてないし、問い詰められるようなこともしてないだろ。その不気味な笑顔やめろよ。 「……ふん。そう怯えるな。疑いのない無実の生徒を追い詰めることはしない」 俺も無実なんですけど。 「……?なんだ?何か言いたそうだな?成崎優」 「いえ」 「先程のように、本性を出せよ?俺もその方が張り合いがあって愉しい」 「何もないですから」 誰がわざわざあんたを楽しませるかよ。 「じゃあちょっと、……電話してみます」 電話する、と言っているのに風紀委員長様は全く腕を離す気がない。 そんなに俺って逃げそうな見た目なわけ?離してほしいと言ったところで、ここまでの全てを却下されているわけで今さら突然離してもらえる気もしないので仕方無くこのまま電話を掛ける。 「…………ぁもしも、」 「もしもし、成崎?」 早い。ワンコールで出たよ。 「藏元、ごめん。今電話しても大丈夫?」 「俺はいいよ。成崎、大丈夫?」 「あのー……それがちょっと問題発生で……」 どこからどう説明しようかな。 「成崎怪我はしてない?どこに行けばいい?」 頭のなかを整理する間も無く藏元が返答を求めてくる。多分藏元は、いじめっ子たちの虐めにあった俺がヘルプコールしてると思ってるんだよね。 これはもう、すぐこっちに来てもらった方がいいかな? 「俺の体調は全然問題無いんだけど……今からさぁ……生徒会室に来れる?」 「え……生徒会室??」 「そう。最初は全然余裕だったんだけど、予想外のことっつーか……人っつーか……」 チラリとその人を見上げれば、俺を見下している風紀委員長様。 ……やっぱ嫌いだ。 「……その人のせいで面倒事になっちゃって、暫くかかりそぅいででででっ!!!」 「成崎っ!!?」 やられっぱなしもムカつくので、藏元に愚痴る形で風紀委員長様への不満を言ってみたら、まぁ当然制裁を食らった。 「くっそ……やっぱ筋トレはしたほうがいいね俺」 「成崎!本当に怪我してない!?」 「それはマジで大丈夫。……でね、色々事情を説明しなきゃならなくなったんだよ。藏元にはあとでちゃんと説明するつもりだったけど……どうせなら、一緒に聞きませんか?っていう、……誘い。あはは」 あとで、というのは嘘だけど。こんなことにならなければ、誰よりも先に、藏元に説明することなんだよね。 「…………」 「……藏元?」 「今、生徒会室には、生徒会長……いるよね?」 「ぇ……うん。」 「…………」 「……?……あの……忙しい?」 「……そこに、俺が入っても大丈夫なの?」 「は?」 なんだよそれ。 「……気が進まない、とかなら……ごめん」 「……そうじゃなくて……」 「でも、俺は藏元に来てほしいって思ってるから」 遠慮で来ないは、無しだぞ。 「……分かった。行くよ」 「……ごめん。ありがと」 宮代さんは先輩だし、藏元はちょっと警戒もしてた。進んで会いたくはないんだろうな……。 「ぁそれと、藏元」 「何?」 「前もって言っておくけど」 「うん?」 「風紀委員長様もいらっしゃるのでそのつもりで」 「えっ!?」 かなり驚いた声をあげる藏元に、説明する順番が不適当だったことに気付く。 風紀委員長様に会いたくないのは、なにも俺だけじゃないだろ! 「ごめん!だよね!そこ先に言うべきだったよね!やっぱ来るのやめる!?」 「いやそのっ……ふたりきりかとっ……」 「……ん?」 「なんでもない!今すぐ行くから!」 「??」 切られた電話を眺めて、首を傾げる。 ……ふたりきりとは?

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