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「…………?」
「……快諾、では無かったようだな?」
眺めたまま固まっていると、偉そうな声が降ってきた。
「……えぇ……まぁ……はい」
「……お前さぁ」
「……はい?」
「俺に喧嘩売ってるよなぁ?」
「はい?!?」
そんなつもりはなかったんだけど!?風紀委員長様にとって、不満を含む苦情は全部、喧嘩売ってるになるの!?お客様の声ってやつにはならないの!?
ぐんと引き寄せられまた胸ぐらを掴まれる。
またこれですかぁ?何回酸欠にさせれば気が済むんですかぁ?
「俺のせいで面倒になった、のか?」
「ふっ、ふざけただけっすよぉ……!」
そんな嫌味な冗談無いと思うけど……
「俺がいたら、来たくなくなるのか?」
「だっ、だって暴力的だからっ……!」
「お前、ほんと面白い上に癪に触るなぁ」
「っ……!!」
あーもうやだ。吐きそう。
胸ぐらを掴む手を為す術無く見つめていたら、横から現れた別の手が風紀委員長様の手を掴んだ。
「いい加減にしろ塚本」
「……あ?」
俺じゃどうすることもできなかった風紀委員長様の手を、宮代さんは平然と払い除けた。胸ぐらも腕も解放され、久々の自由を手に入れた。
「逃げないように……その理由を百歩譲って呑み込んで、腕を掴んでいることは許した」
「……」
「だがそれ以外は、俺が認めない」
「……くくっ……そう怒るなよ宮代。これくらいいつも見てただろ?むしろまだ軽いほうだ」
「友人を助けたいと思うのは普通だろ。お前に普通の感情があればの話だが」
「……普通か……あーでも、宮代と同じ感情は俺も持ってるぞ?」
チラリと俺を見た風紀委員長様は、宮代さんに向かってとても意地悪な笑顔を見せた。
「成崎優、面白いやつだ。近くに置いて遊びたい、暇潰しには調度いいってなぁ」
「風紀以外で関わったら、お前の行動は暴力行為として処分する。……成崎に近づくな」
…………おかしいな。体はとっくに自由で、首も絞められてないのに、俺呼吸困難でぶっ倒れそう。ここの緊張感とんでもないんだけど……。助けて。早く来て藏元。
「だがまぁ、宮代には謝りたいと、少し思った」
「お前が謝るなんてあり得るのか」
人間にとって謝罪は基礎的で一般的な感情で、必ず経験のある行為だけど風紀委員長様の謝罪は常識では考えられないことらしく宮代さんは驚きと懸念の顔をした。
「間抜けな東舘とまさか同じ人間に気を寄せるなんて下らねぇと思っていたが、……これ程ふざけた奴ならと、納得したよ」
誰がふざけた奴だ。
「度々癪に障るが……それも新鮮だ」
「癪に障るのなら近づくな」
ですよねー俺もそう思います。
「くくっはははっ!お前がそんなに苛立つのも新鮮で、最高だよ宮代」
他人の苦しみ、不快こそがこの御方の喜び。根っからの鬼畜かよ。
「くくっ……安心しろよ。興味はあるが知りたいだけだ。他の感情はねぇよ」
「……どういうことだ」
宮代さんも俺と同じ疑問を持ったらしい。
俺を知ったところで、平々凡々な俺にはこれといって何もないぞ……?
「今の俺の、一番の興味は─」
何か大事なことを言いかけた風紀委員長様の言葉はドアの開く音で遮られた。
「成崎っ……!」
少し焦った声を上げて、藏元がそこに現れたのだ。
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