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「本題だ。さっさと始めよう。他に人もいねぇし、ここでいいだろ」
「いや、生徒会室は来訪者が多い。念のため、奥の部屋にする」
「警戒を怠らねぇのは、こいつのことだからか?」
「……。成崎、藏元、奥の部屋に行ってくれ」
宮代さんは風紀委員長様を一睨みして、俺と藏元を奥の部屋に連れて行ってくれた。
ソファーとテーブル、書類棚があるだけの閑散とした部屋だった。
この部屋は普段何に使われているんだろう?先生が来たときとかの、目上の人用?それとも全く逆の、指導室?
俺と藏元が隣に並んで座り、その向かいのソファーに宮代さんと風紀委員長様が座った。
手を組んで座った宮代さんとは対照的に、風紀委員長様は長い脚を組んでデカデカとした態度で背凭れに寄りかかり座っていて、それがまぁ偉そう。絵に描いたように偉そう。見るからに独裁者っぽい整った顔、切れ長の鋭い目、何か恐ろしいことを企んでいそうな不適な笑み、それら全てがこの上なく……
「そんなに見つめるなよ成崎優」
「ハッ!」
「虐めたくなるだろ」
「ひっ……す、すみませんっ!あまりにも恐ろしい御方でしたので、文字通り顔色を伺っておりました!!」
「成崎ごめんな。こいつは性格も態度も、ずっと最悪なんだ」
「お前みたいに、いい顔くっ付けて、本性分からねぇ奴のほうが気持ち悪いけどな」
爽やかな笑顔と楽しげな笑顔に似合う会話は、こんな会話じゃないと思う。凄く勿体無いですよ、ふたりとも……。
「おふたりとも、俺の成崎の時間を無駄遣いしないで下さい」
藏元ーーーっ!?
「俺の……?」
風紀委員長様が透かさず食いついてきた。宮代さんは無言で藏元を見つめている。
「ふっ……噂は本当だったのか。なぁ、宮代?」
「……」
な、何故宮代さんに振る?そして宮代さん、どういう意味の無言?俺がそっち側にいったこと……幻滅してる?宮代さんには、ちゃんと直接言うべきだった?
「……えっと……俺、は…………だから……その……」
「なんだよ」
「……藏元、と…………つ、……てます」
「あ?」
「……付き……合ってます……」
「あぁ。だから、噂通りってことだろ?」
それだけを言うのに、何をしどろもどろになってんだよ。
風紀委員長様はそう言うけど、俺からしたら結構レベルが高いんだよ。恋愛の報告なんて、したことないし。
「……で、それが何か関係あるのか?」
「……そ、それが…………今回の虐めの理由です」
虐めの理由を言葉にしてしまえば、藏元は責任を感じてしまうだろうし、宮代さんには心配をかけるだろう。でも、風紀委員長様にはずっと睨まれているわけで、言葉ひとつ、表情ひとつの違和感を、嘘を察知されたら、また余計な罰則を与えられてしまう。
ここは慎重に、言葉を選びながら正直に打ち明けていくことにする。
「……で?お前はなんで、されるがまま、だったんだ?」
トイレで起こったことについて言っているんだろう。その件を知らない藏元と宮代さんは風紀委員長様を見てから、俺に疑問の目を向けてきた。
「説明します、最初から」
苦笑いしつつ、足らない情報を補足していく。
「ここに連行される前、俺誰かに捕まって、トイレに閉じ込められました」
「!」
「あ、でも!全っ然大したこと無くて、」
藏元が暗い目をしたから慌てて平気であることを付け加える。そんな俺を見て、風紀委員長様は鼻で笑って腕を組んだ。
「あの場所は、どう見ても大したことなく無かったけどな」
「……どんな状況だった」
さっきまであれだけ否定と暴言ばかり言い合っていたのに、宮代さんは風紀委員長様と真剣に話し出した。
こういうところはちゃんと、風紀委員長と生徒会長、なんだね。でも風紀委員長様、お願いだから余計なこと言わないで下さい……!
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