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「…………で、次は何すればいい?」 藏元が出ていって数秒、皆が顔を見合わせて様子を伺っている。 何もそこまで重い空気になる必要はないだろうと、俺は普通に会話を再開した。採寸が終わり制服を着直して斎藤を見れば紙を持ったまま固まっている。 「……いいの?」 「……何が?」 皆が未だ黙るなか渡辺が口を開いた。 「約束が何なのか、俺は何も知らないけど……風紀委員長様と藏元くんのこと、そのままにしてていいの?」 「……んー……心配なのは同じなんだけど……」 任せるって……言っちゃったし…… 渡辺と俺は至って普通に、真面目な話をしていた。それなのにその会話を聞いて、黙っていた回りの奴等が突然盛り上がり出した。 「も、もしっ、もしもさぁ!このまま藏元くんがずっと風紀委員長様の傍にいたらさぁ!!」 「……えっ!?ちょっと!!それは駄目だろぉ!!?」 「でもでも!ずっと続いたらっ、あり得ない話じゃないでしょ!?」 「そうだよ!今までに聞いた話じゃ、大抵の人はなるって言ってたし!!」 ぎゃあぎゃあと何かの論争を始めたクラスメイトたち。 傍にいたら?あり得ない?なる?一体何の話だろう? 「ちょっと皆っ、成崎くんの前でそんな話しないでよ」 「えーでもさぁ!」 渡辺が俺に気を遣ってくれたようだが、クラスメイトたちはなんだか厭らしい笑みをつくってニヤニヤしている。 「……ごめん、俺だけよく……話が見えてないっていうか……」 「……あれ?成崎くんが話を理解できてないなんて珍しいね」 「……ん?」 「学校の噂や情報なら大抵知ってるでしょ」 「……風紀委員長様の噂話をしてたの?」 「うん。風紀委員長様と関わった人がその後どうなるかって噂、……知ってる?」 「……あぁ。そういうことか」 そこまで言われて漸く分かった。 ったく、こっちは真面目に話してたのにほんと呑気なクラスメ…… 「……ってコラッ!!その話やめろ!!あり得なくなくないから!!絶対ないから!!」 「えー?何で言い切れるのー?」 「風紀委員長様の影響力は図り知れないだろー?」 「風紀委員長様に弄られる藏元くんの、弱々しい姿もちょっといいかもっ!」 彼らが言う、風紀委員長様の噂。それは、あの御方に関わるとみんなそのうち……ぇ、Mに……なってしまうというもの……。 「ならねぇよ!藏元はならねぇよ!!」 そもそもあいつ本人が、普段Sっ気隠してるだけで、本性出すと結構なSだし!!第一、俺だってなってねぇし!むしろ風紀委員長様のこと嫌いになってるし! 「でもちょっと……風紀委員長様と藏元くんのツーショット……見てみたいよね」 ボソリと呟かれたクラスメイトの一言に騒ぎ立てていた皆が一斉に黙った。 皆の妄想が、俺には恐怖でしかない。 ツーショットが見たい?それって何?ふたり揃ってるところがただ見たいだけ?それとも風紀委員長様にこき使われてる藏元のツーショットが見たいってこと? 「……もっ、もうやめろよ!!妄想の藏元で遊ぶなよっ!!」 「いいじゃん想像くらい許してよっ」 「恋人の位置は成崎くん以外許されないから、想像の藏元くんくらいは自由にさせてよっ」 大笑いしながら皆が馬鹿にしたようにからかってくる。ぎゅうっと、拳に力が籠る。 「……藏元はっ、格好悪いところなんか、ねぇからっ……」 何を意地になっているのか、我慢すればいいところを俺は反論を溢してしまった。 それに反応して、さらに皆が煽ってくる。キャーキャーヒューヒューと煽りに煽るそのなかで、渡辺が満面の笑みで言ってきた。 「成崎くんって意外と、凄く情熱的なんだね」 「…………」 顔に熱が集中するのを感じながら、俺は渡辺を無言で見つめた。 ……くそっ……必死に表に出さないようにしてるけど、俺は藏元のことが凄く……

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