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この……今の時期くらいって言った?だって、相手は3年だろ?しかもファンを毛嫌いするアイドル様。この学校の文化祭と言えば……というか、この時期の3年と言えば……。
“決断の日”と呼ばれる、この学校では有名な裏イベント、文化祭。
現に今、俺だってコレを先読みしちゃってかなり悩んでるんだぞっ……。
「……知ってるよな」
「……はい」
「ここの生徒は3年になると……文化祭を区切りに決断する。卒業後も今のパートナーと付き合っていくのか、卒業後は綺麗さっぱり関係を解消するのか」
「……そうっすよね。そんな時期に、いきなり告白なんて……」
同性の付き合いだ。この学校を卒業してまで付き合いを続けられるのか……そこまで現実は甘くない。だから、別れることを一概に非難なんて出来ない。
それでも……告白の成功率が一番低いそんな時期にしてしまうなんて……
「告白してから何日か……ずっと避けられてた。東舘も、告白は間違っていたと後悔していたよ」
「…………」
「……なのに、文化祭当日……東舘は呼び出された」
「!!じゃあっ」
まさかの逆転OK!?ギリギリまで悩んで、でもその人もっ……
小さく笑った宮代さんは掌を見つめていた。
「呼び出されたら……誰だってそう思うよな」
「ん……?」
暗く陰った宮代さんの瞳。俺はそれが何を意味するのか理解できなくて、次の言葉をただ待った。
「呼び出された場所には、先輩と、あとふたり、いたらしい」
「…………!?」
ゾッとした。頭の中を過った最悪の想像が、願わくは外れてくれと思ったが宮代さんの表情からするに十中八九そうなんだろう。
「あのクズ共……」
「やっぱり……その線なんすね……」
「俺も駆け付けるのが遅かった」
「継さんが助けに……?」
「俺が仕留めたのは先輩だけ。ふたりは誰なのか分からなくて……逃げられた」
仕留めたって……言い方が怖いよ。
いや、もしかしたら、友だち思いの宮代さんのことだ。本当にその人を……
「それから3週間くらいか……。東舘は、寮から出てこなくなった」
「そりゃ……そんな酷いことされれば誰だって」
話を聞いただけで動揺してしまうのに……
「ただそれから突然……学校に来るようになった」
「……え?」
「でも人格が変わったように、別人になってて……それが、今の東舘だ」
「……は?何すか?復活したと思ったら既に変態になってたって??」
展開が急激すぎて、思考が追い付かず頭をガシガシと掻き乱す。
「恐らく……あの時あの先輩に何か吹き込まれたのかもしれない」
「…………」
「滅茶苦茶な行動しているようで、時々意味有りげなことを言うだろう?」
「……あぁ、それは……確かに」
いくつか心当たりがある。
「じゃあ、東舘さんはまだ……完全に吹っ切れたわけじゃない……?」
裏切られ傷付いた自分を隠すために、軽薄な性格を作り上げた?自分は気にしてないって……これが俺の性格だって……?
「優」
「……はい?」
「東舘のことは確かに同情するし、知れば心配になる。でも優だってその東舘に傷つけられたこと、忘れるなよ」
「あ……」
そ、そうっすよねー。俺も強姦されかけましたけど……
「でも最初は普通の人だったなんて……」
ソファーに座り直して気持ちを落ち着かせる。あんなハイテンション宇宙人に、予想だにしない衝撃の過去があったなんて。
「……何かする気なのか?」
「ん?」
「優はとっても優しい子だ。東舘を心配するのは優らしい。でも、優が直接東舘に接触するのは危険だ。大袈裟には、聞こえないよな?」
「…………」
「何かするにしても俺か………………藏元に相談してからにしてくれ。……な?」
「すみません。散々迷惑かけてるのに俺、」
「そうじゃなくて……優」
愚かすぎる自分の考えに俯いて膝の上で拳を作れば、椅子から立ち上がった宮代さんが俺の傍まで来ると、ソファーの前でしゃがんで拳に手を添えてきた。
「優は、他人のために自分を犠牲にするから。ただ、心配なんだ。また優だけが傷つくんじゃないかって」
「……ははは。俺ってそんな格好いい人に見えます?それじゃまるでヒーロー」
「あぁ。優は、皆のヒーローになりすぎてる」
「!?ちょ、やだな、継さん。んな事言われると俺調子に乗りますよー?」
わざとおどけてみせると、ぎゅっと握られた手に少しビックリした。
「もう少し、自分を大切にしてくれ。俺の大切な……」
「……?」
……宮代さん?
「……大切な友だち、なんだ」
「!……はい、気を付けます」
握られた手を見つめながら、コクりと頷いた。
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