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生徒会室を後にして、教室から鞄を回収した俺はそのまま真っ直ぐ寮の部屋に直帰した。 鞄をソファーに放り投げ、着替えもせずキッチンに向かいお湯を沸かす。 脳をフル回転させて物事を必死に整理している状態の今、視界に映る全てをスルーしてしまい……ボーッとしていないのにボーッとしている、不思議な心理状態にあった。 沸騰し始めたお湯の火を止め、カップに注ぐ。カフェオレの甘い香りが漂ってきたとき、ポケットに入れっぱなしだった携帯電話が震えた。それを無意識の動作で耳に当てる。 「もしもし」 「ぁ成崎、今電話大丈夫?」 「んー。どうしたー?」 「今は……寮?」 「んー今帰ってきた……ぁごめん、報告してなかった」 「ぁううん、無事ならいいよ」 「……ん?走ってる……?」 集中できない集中力のなか、向こうから聞こえる藏元の息遣いが少し乱れていることに気づく。 「ぁー……うん、それで……学校から戻るまで……何もなかった?」 「……ん。特には」 「ほんとに?」 「……ぇー……何かあったかな……」 如何せん、こんな意識状態だ。生徒会室からここに戻ってくるまでの記憶がほぼ無い。 「……ぁ、ロッカーに貼り紙あった……かな……」 「またか……」 「確か……あった気がする……」 はっきりしない上の空の返答に、藏元も違和感を覚えたんだろう。少し声のトーンが落ちた。 「成崎……大丈夫?」 「んー……?」 「……貼り紙、何て書いてあった?」 「んぁー……なんだっけ?……よく覚えてない」 「……今何してるの?」 「……え?ぁ、んとー……ぁカフェオレ飲もうとしてる」 「何かあったんだね」 「……ん?」 何かあったって……あ、俺の事? 「こっちの事片付いたら、すぐそっちに行くから」 電話の向こうから聞こえてくる藏元の足音がより一層速くなった。そっちの何かを、早急に済ませようとしているらしい。 「……ぇいいよ来なくて」 「……え……」 「来なくていい」 「…………」 「……ん?」 無言?俺なんか変なこと言った? 自分の無意識の発言を、脳内再生し直す。 「…………あっごめんっその、そっちも忙しそうだし俺は大丈夫だから聞き流してもらっていいよって意味で」 「……普段以上に無理してるね」 「え……?」 その一言に、小さな棘が刺さったように胸の奥が痛んだ。 俺は無理してるのか?俺の自覚の無い無理のせいで、大切な人たちに心配かけてるのか? 「……ねぇ……藏元……」 「っ……ごめん、1回切るね」 電話の向こうで何かあったらしい藏元は余裕の無い一言を告げて電話を切った。 「……」 最近悩むこと多くなってきたなぁ……禿げそう。 カフェオレを飲みながら、そんなことを思った。

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