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「藏元っ、これは、あのー……何て言うか……」
「優くん知ってたの!?」
藏元に事情説明しようとしてみても、動揺している亜美さんがそれを阻む。
元カレがいたらその反応が普通だよね。でも、動揺してるけど、少しテンション上がってるようにも見える。
「あの、あのね!私、歩生ちゃんと友だちで、歩生ちゃんが優くんと幼馴染みでっ」
……あれ?イケメン苦手になったとか、残念とか、何か色々言ってなかった?なんで藏元と向かい合った途端に辿々しくなってんの?……色々言ってたくせに、結局まだ…………好き?
「成崎の、……幼馴染み?」
「ぁはい、どーもー」
歩生は歩生で、藏元と向き合っても既にいつも通りのペースだ。そういうとこ尊敬する。
「だ、だからね、玲麻くんがいるってことは知らなかったんだよ??」
……ぁ。
たった今、藏元と宮代さんの言い分を理解した。
“玲麻くん”
亜美さんがそう呼んだことが、悔しかった。
「……河村は、成崎に会いに来たの?」
「そ、そう。優くんと話したいことがあったから」
「話したいこと?」
「違う。藏元、違う。前にちょっと……俺がやらかしたんだよ。だから、その気遣いっつーか……亜美さんの優しさですよ、はい」
「前に?」
「あぁうん、夏休みに」
「夏休みに会ったんだ?」
「偶々だよ。俺もビビったんだよ。まさかさぁ、そんな繋がりの人に会うとは思わないじゃん?」
「……あっ。じゃああの電話の時?」
「ん?……あ、そう。その時」
「……ねぇねぇ」
俺が藏元に継ぎ接ぎの説明をしていると、歩生が不思議そうに声を掛けてきた。
「電話って、……路上で掛けてた電話のこと?」
「……は?」
目をパチクリとして見つめてくる歩生に、数秒おいて失言したことに気付く。
あっあっ、ま、まずい!!!あの時、歩生にそれは告白だっ電話相手は好きな奴だと見透かされたんだった!!電話相手が藏元だとバレたら、それはつまり、歩生にっ……!!
「っ…………」
「…………そっか。」
ニコッと笑ってそれ以上は聞いてこない歩生に、不安と恐怖と絶望が拭いきれない。そんな俺を放っといて、最早藏元しか見てない亜美さんは話を進める。
「玲麻くん、何か少し……雰囲気変わったね」
「そうかな?」
「うん。……なんか……何て言うんだろう」
「うちが思うに、聞いてた話より、あったかい感じがする」
「?あったかい?」
藏元に笑いかける歩生の言葉そのものが、暖かく思える。亜美さんが持ってた写真の藏元と、今の藏元は、他の人から見てもやっぱり違うんだと思った。
「……ねぇ、玲麻くん」
「何?」
「……今から少し、お話しできないかな」
「……ふたりで、てこと?」
言葉はなく、コクりと頷いた亜美さんを見てから俺を見てきた。
「…………少しなら、大丈夫だよ」
藏元の返答にパッと笑った亜美さんから、嫌というほど伝わってくる。まだ好き、という感情。
ふたりで歩いていくその姿を見て、俺だけじゃない、周囲の皆が思ったはずだ。
美男美女、お似合いだって……。
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