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「…………」
「…………」
「無事終わったねー演劇!」
「皆大満足って感じでよかったね!」
「…………」
「…………」
「これはもう、賞もらえるんじゃない?」
「賞品なんだろ!?遊園地!?リゾートホテル!?」
「温泉旅行とかもいいよね!!」
「あー楽しみ!!」
「クラスの皆と旅行できるなんて最高だよー!!」
わいわいと盛り上がりを残したまま片付けをする教室内で、俺は藏元の傍にいるも何だか気恥ずかしくて黙ったまま突っ立っていた。
賞ね……皆なんで貰えるって思えてるんだろ。台本無視して無茶苦茶やって、あんなグダグダで終わったのに……
一般公開のほうはどんな評価されてんのか知らんけど、ラスト公演は絶対失敗だろ。あれを大成功だと思えてるクラスメイトたち、ある意味尊敬する……。
皆の盛り上がりを他人行儀で見ていた俺は、隣の藏元をチラリと盗み見て、恐る恐る声を掛けてみることにした。
「…………あの……」
「……なんでしょう」
喋ってみても、結局ぎこちない。
「……この後の……打ち上げ、どうしますか……」
「……成崎は、……参加しますか……?」
「……ぉ、俺はその…………疲れたので」
参加しないつもりです、と続けようとしたら別の生徒がいきなり会話に割り込んできた。
「うそうそ!?打ち上げにこないとかあり得ないでしょ!本日の主役ぅう!!」
「えっ!?成崎くん参加しないの!?」
「駄目だって!!それこそ批判の嵐だって!」
ひとりが俺たちの会話を大声で言うものだから、瞬く間に教室全体に広がり否定の声が相次ぐ。
「主役って……俺は別に」
「愛の公開宣言されといて何言ってんの!!もう大反響だよ!?打ち上げにふたりが来ること、殆ど全生徒が期待してると思うよ!?皆絶対ふたりの話聞きたいよ!?」
「愛っ……!?そ、その件に関してだけどな!!俺は藏元だけじゃないっ、皆に聞きたいんだけど!?あのアドリブはなんだよ!?俺以外皆知ってたのか!?」
「あー……それはぁ……ねー……?」
困惑と笑顔を混ぜたような微妙な表情をしてその生徒は藏元に視線を向けた。
「……観客の半分くらいは、見に来てほしいって、俺が頼んだ子たちだよ」
「…………は?」
「……藏元くんのファンだよぉ……」
「!!?」
藏元とクラスメイトの説明に、俺は驚愕のあまり絶句した。呼吸しようにも肺が縮こまってしまったように、上手く呼吸ができなかった。
ななななっ、ど、どういうことだ!?なんでファンにあんなもの見せた??!絶望の光景を植え付けただけじゃないのか!?
「俺が一方的に好きじゃ……あの人たちは認めてくれなくて……。成崎が舞台上で応えてくれたから、認めてもらえた」
「…………」
……アイドル様が片想いして苦しむのは見てられないけど、両思いだということを確認できたのなら、ファンたちは応援すると?
……いつだってアイドル様最優先で、今に始まったことじゃないけどさ……やっぱり言いたい。
……俺の意思は?
「とにかく!ね?藏元くんの頑張りと、今回のサプライズ公演で、もう殆どが応援してくれる人たちだから!打ち上げには御披露目として顔出さないとぉ!」
「嫌だよ!!なんだよそれ!!見せ物じゃねぇし!」
「それは分かるけどさぁ。せっかく認めてもらえたんだから、お祝いしたい人たちのお祝いは我慢してでも受けないとさぁ」
何がお祝いっ……掌返したようにそんなことされて、素直に喜べるかよっ。
藏元が、色々我慢して、色々頑張ってくれたのに、今後も愛想笑いで頑張らせろって?ファンのくせに、好きだというくせに、なんで無理させて疲れさせるんだよっ!
「認めてくれないならそれでもいいし!所詮他人だろ!俺は藏元が好きだし、藏元が普通に笑えてたらそれでいい!我慢するようなこと、わざわざさせたくねぇの!!」
「…………」
「…………」
「…………成崎くん、……」
「……と、とにかく……俺は参加しない。」
皆真っ赤になってる。
分かってるよ。俺が勢いに任せて暴露しちゃったって、自覚してるよ。
でも口から出てしまったことを今さら撤回できなくて、顔が熱いと感じながらもこの話題を終わらせにかかる。
「だから藏元、無理して参加なんて」
「……成崎、……俺は参加してくるよ」
「っ!!?」
えー……?俺の主張聞いてました?そう言われちゃうと、俺がひとりでいい気になって間違った正論振りかざしたみたいになっちゃうんだけど……
「今凄く……叫びたいくらい嬉しいから……」
「……ん゛?」
「ありがとうって、皆に伝えてくるよ」
「………………」
「も、もうっ!!ラブラブを見せつけないでよふたりともぉっ!!」
「見てるこっちが恥ずかしくなるって!」
「“ふたりの世界”が最強すぎてやばいっ!!」
「ご馳走さまですっ!!」
綺麗な顔を手で隠して照れる藏元と、キャーキャーと騒ぎ立てる皆に、俺はどうリアクションすればいいのか分からずただ呆然とその場に立ち尽くした。
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