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「……さて、何作ってたの?」 「ぅおっ!?え?ちょ、藏元、危ねっ、手放して」 仲直りの握手、と思って握り返した手は離されることなく、そのまま引っ張られた。 俺の戸惑いの声は聞く気がないのか、藏元は繋いだまま部屋のなかに突き進んでいく。 「打ち上げ会場ではみんなと話すばっかりで、殆ど食べられなくてさぁ……正直お腹すいてたんだよね」 「ぁそう。てか藏元、手」 「ぁまさか料理っていうのも冗談?」 「いや、それはマジだけど……取り敢えず手」 「これから?俺も何か手伝うよ」 「うん、じゃ、まず手を」 キッチンに到着して切りかけのじゃがいもを見下ろす藏元に、繋がれた手を振ってアピールする。これじゃ何もできないだろ。 「…………」 「…………藏元?」 「…………ほんとはね、」 「?」 「怖かったんだ……」 「??」 「河村の存在が、不安でしかなかった」 「…………」 じゃがいもを見つめながら、唐突に何を言い出すんだ。 ……一応、これ真剣な話……だよな? 「……知られたくない過去を暴露されたらどうしよう……的なこと?」 「あはは……それも、少しはあるけど、」 じゃがいもを見つめていた藏元の視線はゆっくりと俺を見つめてきた。 「……河村、可愛かったでしょ?」 「……っ!バァカ!そういうことかよ!あのな!ああいう子はな、お前みたいなイケメンじゃねぇと無理なの!確かにとっても綺麗な人ではあったけど、俺はありえない!!分かってるのか!?あれと付き合えるお前の実力はそれくらいの事なの!!」 「はぁー……分かってるのかって、言いたいのはこっちだよ」 「なんだよっ?」 手を放した藏元は手を洗い始めた。真剣な話ではあるけれど、どうやら“ながら会話”でも構わないらしい。 「普通、なんとも思ってない相手にわざわざ会いに来ないよ」 「だから、謝罪のためだろ?」 「友達になりたい、とも言われたんでしょ?」 「……あー……それは……いやぁ……色々誤解があってさぁ」 藏元と交代して手を洗いながら、亜美さんとのやり取りを思い出す。 亜美さんはすごく前向きに捉えてたけど、俺は自分勝手にキレただけだったし……あの人のために怒ったわけじゃない。 だから誤解されたまま友だちになるっていうのも、どうなんだろう…… 「……てかそもそも、藏元と会った瞬間あの人めっちゃ嬉しそうにしてたじゃん。絶対俺じゃないから」 手を拭いて、じゃがいものカットを再開する。藏元にはピーラーと人参を手渡した。 「…………でも、成崎そのあといなくなっちゃうし、教室に戻ってきたら、話があるって言われるし……別れ話かなってちょっと思った」 「え!?ぁ、ご、ごめんっ……それだけ聞くとタイミング最悪だな……」 包丁の手を止めて、皮剥きする藏元を見ると苦笑していた。 不安にさせてるのは、俺のほうだ…… 「でも即興劇を押し切っちゃって……あの時俺、フラれる覚悟だったんだよね。だから、応えてもらえて本当に嬉しかった」 「あのさぁ……」 切り終えたじゃがいもをボールに張った水に入れ、さっと洗って笊に上げる。皮を剥いた人参を受け取り、藏元を見上げる。 「……なんでそんなに謙遜すんの?」

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