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「ぁ、お早う藏元くーん」 「朝練お疲れさまぁ」 恐らく藏元関連の話を勝ち誇った顔で話そうとしていたクラスメイトたちは、ご本人様登場で一気に気まずくなったのかサァッと俺の机の回りから捌けていった。 「?何か、あったの?」 当然不自然に思ったらしい藏元は、未だ突っ立ってる俺に首を傾げた。 が、俺だって彼らが話そうとしていたことは分からないので、俺も首を傾げた。 そんな状況のなか漸くチャイムが鳴り、ズッキーが入ってきた。 「お早うー、おーしHRだぞぉ座れー」 「…………」 「…………」 疑問を残したまま取り敢えず俺たちは席に着いた。 「んじゃ……えー…………、なんだっけ」 おい。出だしからそんなかよズッキー。 「あぁそうだ。もう知ってると思うが、文化祭の優秀賞、おめでとうお前らー」 生徒たちに向かってダラダラとした拍手を送ったズッキーに合わせるように皆もパラパラと控えめの拍手をした。 「今回は2クラスだったから、景品は今協議中だ。後日発表あると思うから待ってろー」 頭をガシガシ掻きながら告げるその姿、祝ってる感が全くないのが凄い。興味皆無な雰囲気が全身から滲み出てるズッキー、ここまで素を出せるのもある意味才能だな。 「じゃあ次、祝ってすぐだけど、嫌な連絡するからなぁ」 「……テスト期間がやって来ましたー」 再びダラダラと拍手をするズッキー。今度は誰も拍手を返さなかった。テストの宣言なんて、誰も喜ぶ筈無いもんな。 「文化祭のお祭り騒ぎからテストなんて……嫌だなぁぁ」 えー……それ、教師が言っちゃうんだ。なんであんたが一番嫌がってるんだよ。余計生徒のやる気削ぐ気かよ。 「てことで、テスト勉強頑張れよぉ………………ぁ、成崎」 「はい?」 頬杖をついて弛く構えていた俺は、突然呼ばれて少し驚いた。 「成崎はぁ……係、まだやってくれるのか?」 「はい……?そのつもりですけど」 「王子専属にならなくていいのか?」 「意味が分かりません。俺が係なんですから、やりますよ」 「ぁそう。……藏元王子は?それでいいのか?」 「成崎の好きなようにしていいと思います」 「ぁそう。……つまんねぇなー」 ズッキーは個人的感情を隠す気なんて更々無いらしい。教師らしさは日に日に無くなっている気がする。 「じゃあHR終了ー。ちゃんとテストに備えるよーにー」 欠伸混じりに終了を告げ、ズッキーはダラッと教室を出ていった。 ……テスト、か。前回は忘れかけたからな。今回はちゃんと仕事しよう。 そう思って席を立つ。 「ぁ、成崎くん」 「ん?」 「ちょっと待って!」 「?」 前の席の生徒が呼び止めると、慌てた様子で藏元側の席を振り返った。すると、それに反応した他の生徒が思い出したように藏元に声をかけた。 「あのっ、藏元くんっ、成崎くんのこと、誘った!??」 …………ん?

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