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「んっ……ぅ……はぁっ……ま、んぅ……!」 どれくらい……いつまで…………酸素ほしい………… 噛みつくようなキスは、酸素を求める俺の制止なんか聞かず、何度も何度も口を塞いでくる。鼻で息するって言ってもこれじゃ限界がある。この行為に対して今の酸素じゃ、絶対足りない。 息苦しくて顔を背けようにも、目の前の王子様は両手で俺の顔を包んでは正面に引き戻す。 口腔に侵入してくる舌は俺の舌を絡めとっては好き勝手に乱していくし、長い指は耳朶やうなじを(くすぐ)るように撫でてくるし、もう必死に微量の酸素を求めるだけで手一杯で自分自身で立っていることもしんどかった。 本棚を背もたれにしてどうにか立っているけれど、これじゃ結局逃げ道がない。 「ふ、ぅ……ぷぁ……!藏も……ま、て……んっ」 ちゅぷ ちゅ もうほんとっ……酸欠で目眩してきたっ……!! 「っんぁ……!!」 脚の力が抜けてしまい、その場に倒れそうになり咄嗟に背後の本棚に手をついた。そのせいで本が一冊床に落ちてしまった。 「……大丈夫?」 「はぁー……はぁー……っ……はぁ……」 俺の腰を支えて顔を覗き込んでくる藏元は至って普通……というか、なんか笑ってる。爽やかなやつじゃなくて、なんかこう……ニヤリ、みたいな意地悪な笑顔だ。大丈夫じゃねぇよ。誰のせいだよ。 「はぁー……疲れた……力入らね……」 「ごめんね」 「っ……何が……?」 「俺、成崎のこと好きすぎるんだ」 「!!?なっ」 「触れたくて仕方ない……」 「……ぉ」 「…………大好きだよ」 「ーーーっ!?」 本棚に寄りかかる俺の腰を支えたまま微笑みながら見下ろしてくる藏元に、動揺と疲労でどう答えていいのか思考停止する。 出た出た出た!王子様発言!!噛みついてきたと思ったら今度は甘いこと言い出したよ!?俺にどうしろっての!? 「……ぉ俺も…………です、ょ……」 「嬉しいけど、全然分かってないよ」 「んぇ?ふっ……!!」 笑っているのに、少し苛立ったように見えた藏元。その次の瞬間にはまた口を塞がれてしまった。 「んン……ぁ……!」 分かってない?分かってないってなにを?! ちゅ くちゅ 「……フー…………ほんとは、隠し事は気になるし知りたい」 「……??」 「俺以外近寄らせたくないし、頼ってほしくない」 「んっ……」 藏元は顔を寄せると、耳にキスして囁いた。 「ごめんね……」 「………………」 こいつ…………もしかしなくても、自分の方が俺より“好き”が多いとか思ってねぇ? 少し不安そうに微笑んだ藏元に、俺は今まで感じたことのない感情が芽生えた。 今までの、一緒に楽しく過ごしたいとか、無理させたくないとか、笑っててくれたらとか、そんなんじゃない…………不安そうなこの藏元を、いつもリードしてくる藏元を、翻弄してみたい。 そう思えた瞬間、整わない呼吸のまま俺は動いていた。 藏元の綺麗な顔を引き寄せ触れるだけのキスをして、右脚の太股を藏元の主張しはじめていた中心にわざと押し当てた。 「っ」 「……好きってことは充分伝わってきた」 「ン……それはよかったけど、…………何してんの……」 「余裕そうにしてて、余裕じゃねーんだなーと思って」 「当たり前だろ……、成崎相手に余裕なわけない」 「……でもそれ、別に藏元だけじゃねぇから」 「!!ちょっ成崎?!」 緊張で少しだけ震えてる手でそこに触れる。翻弄してみたいとは思ったけど、俺も別に馴れてるわけじゃないから、馴れない手つきは変わらない。 「っ……!」 眉を寄せてほんの少しだけ息を吐いた藏元がめっちゃ色っぽい…… 「……ほんと……どうしたの、……」 俺からこんなことするなんて珍しい。そういうことだろうな。 「……なんか……藏元ばっか好きだって、気持ちで俺が劣ってるって言われてるみたいで…………ムカついた」 スラックスの上から弛く撫で上げる。唇を噛んで快感を堪えるような表情の藏元は、目を細めて俺を見た。 「……っ……やっぱ分かってないよ……」 「まだ言うか……」 「成崎相手ってだけでヤバイんだから…………フゥッ……雰囲気に流されてやってるだけなら、……手、そろそろストップ」 「……じゃあ今回は藏元が流されてみたら?」 「ンッ……前からっ……思ってたんだけど、突然出てくるその悪魔なんなの……?」 「?」 左手は俺の腰を支えたまま右手は本棚について、藏元は徐々に熱を帯びる呼吸を必死に整えながら囁く。 ……俺もそれなりに、ちゃんと、年相応の性欲はあったらしい。今、この藏元を見てて、エロい気持ちになってるのは確かだ。

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