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図書室の窓から見える空はもうとっぷりと夜に浸かっていて、時間的に見回りが来てもおかしくない頃だった。図書室の電気を消し扉を閉めた藏元は、俺に手を差し出してきた。 「?」 「手、繋いでもいい?」 「ぁ……」 「今は、誰もいないし」 蛍光灯の灯りのみの薄暗い廊下に視線を向ける。 確かに、この時間に彷徨いてるやつはいないよな…… 「…………ん」 ゆっくりと、差し出されたその手を握り返す。藏元はそれに心底嬉しそうな笑顔を見せた。ぎゅっと握られ、そのまま歩き出す藏元についていく。 ……結局、やめた理由は聞けていないけど、嫌われたわけではないっぽい……? 「いつも繋げたらいいのに」 「……目立つじゃん……」 「でも、学校で繋いでる人、結構見かけるよ」 歩きながら、口を尖らせて拗ねるような素振りを見せる藏元を横目で見上げる。 繋いでる人って……そいつらは大抵が回りの目気にしてない人たちなんだけど…… 「……その人たちとは、違うから」 「……」 「アイドル様と手を繋ぐって、どういう事か分かってる?」 「……ごめん。俺の我が儘─」 「俺の心臓持たないから。藏元がフツーになったら繋げるんだけどな……ハハ」 「……っ……」 歩みを止め俺を見つめてくる藏元にまた何かやらかしたかと内心ビビった。 「あの、それ、ってさ……」 「ん……?」 「俺と手繋ぐの、意識してくれてるの?」 「ん?」 「いや、その……回りの反応が嫌だからとかじゃなくて、心臓持たないから嫌なの?」 「……………………ぁ」 問われて今さら恥ずかしくなって急激に顔が熱くなった。 アイドル様に、ではなくて、藏元に緊張してるって、本人に向かって何言ってんの俺っ!! 無意識の本音が恥ずかしすぎて俯いたら、頭を優しく撫でられた。 「もう……このタイミングでそれはずるいよ」 「は?」 タイミング?……何の? 「既に決意が揺らぎそう……」 決意? 「……ぇ、藏元、……決意って」 「お前ら、下校時刻とっくに過ぎてんだろ」 「!!!!」 「……」 驚愕する俺と、一瞬にして無表情になった藏元の前には仁王立ちする風紀委員長様がいた。 今日に限って、なんで、何故この人が見回りなんだ……!! 「こんな遅くまで、何してた」 人を射殺せるんじゃないかと思えるほどの鋭い目つきで繋いでいた手を睨んできた。慌てて解こうとしたが藏元がより強く握ってきて離せなかった。 「浮かれた真似してたのなら今すぐに─」 「勉強会の片付けを手伝ってもらってました。そのまま話し込んでしまって、少し話すつもりが、長話になってしまっただけです」 「ほぉ……長話、か。なるほど。どんな話だ?浮かれた阿呆がする話か?あ?」 うわぁ……この御方、また人の秘密暴こうとしてるよ。大体、藏元に要らぬ心配と誤解をさせたのもあんたのせい…… 「あ」 「?」 「そうそう。今度藏元と買い物行こうって話、してたんすよ」 「あ?」 「??成崎……?」 「そちらに電話いきました?亮介くん、めっちゃいい子でしたよ。断るの、本っ当に心苦しかったー」 「……」 「……?」 藏元がポカンとした表情で見つめてくる。 ごめん、あとでちゃんと説明するから。

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