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「でもやっぱお兄さんが来れないってことには凄く落ち込んでて、可哀想だったなぁ……」 「……おい」 「誤解は解けましたよ。けどねー、あれだけ慕ってるんですもん、お兄さんには祝ってもらいたいなって思っちゃいますよねー。いや、ちゃんと、誤解は、解けましたけど!」 「……チッ……」 友人のフリして、弟くんを泣かせることなく断って、その上誤解まで解いたんだから。下校時刻くらい見逃してもらおう。 そしてあわよくば、この話の流れで弟くんのお祝いのために帰省してもらおう。 「……相変わらず、癪に障る奴だな」 「……」 「今回だけだ」 「ぁ、あざっ」 「ただ、お前の言い方、俺に行けと言っているようにも聞こえるんだが?」 「……ぁ……えー……はい……」 「俺がそれほど暇に見えるか?」 「決してそうは言ってないですけど……あれだけ慕ってるんですから、1日くらい帰ってあげてほしいなぁと思いまして……」 「指図すんな」 「えぇえっ!?してねっすよ!?」 どこら辺が指図に聞こえたの!?めっちゃお願いしてたんだけど!? 「……なら、聞いてやる代わりにお前にもやってもらおうか」 「はっ!?」 どちらかというと俺のお願いではないんだけど!?弟くんのお願いなんだけど!? 「俺が帰省する日、お前が風紀の仕事を代行しろ。それが条件だ」 「ぁ……えー……えー?」 そんな条件ある?そんな返しあると思ってなくて何も考えてなかったよ……確かに、たった1日だけでも、この鬼がいなくなる隙をつき良からぬことを企む輩はいるかもしれないから……代理は必要だよな……。 弟くんがあなたを凄く求めてて、行けば喜ぶって伝えればすんなり行ってくれると思ってたんだけど……一筋縄じゃいかないなぁ……。 代わり……俺なんかに風紀の仕事なんてできるわけないけど、それを誰かに押し付けるわけにもいかないし………………それに弟くんは…… 「…………ど、」 「…………」 「どうにかしますっ……!!」 「成崎……!?」 「ほぉ。」 めちゃめちゃ意地悪な笑みを見せた風紀委員長様。俺が風紀のことで手こずるのは目に見えてるんだろうな。 それなのに俺に代行させるとか、ほんと性格悪すぎるな……。 「……なら、」 「あ?」 「俺も代理をやります」 「!!?く、藏元!?」 「あなたに色々教えてもらっていたおかげで、成崎より風紀委員の仕事内容は把握してますから」 「……」 「何より、思い付きの悪戯で成崎に押し付けて、もし面倒事になったら、後々困るのは塚本風紀委員長ですよね?」 す、すげぇ……あの風紀委員長相手に正面から、交渉というか、説得をしてる……藏元まじやば。 「お前が、風紀の仕事を、ね……」 何かを思案しながらポツリと呟いた風紀委員長様に、また嫌がらせされるのかと警戒する。 「その意味を理解してるのなら、好きにしろ」 「?」 ……意味? 「それなら俺としても都合がいい。成崎優、お前の企みに乗ってやる」 「企みって……誰の弟ですか……」 でも、藏元がやるって言った途端すんなり……なんで……? 「この話は終わりだ。あと2分だけ目を瞑る。それ以上校内にいたら」 「わわ分かってます!!藏元行こ!!」 「うん」 ギラリと目を光らせた風紀委員長様から逃げるように、繋いでいた藏元の手をそのまま引っ張って早歩きでその場から立ち去った。

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