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校門を潜り、外の世界に踏み出す。
学校の敷地は広いから閉じ込められてるなんて感覚は普段はほとんどないけどそれでも出た瞬間は思ってしまう。
あー外に出たー、てね。
久しぶりの外だしここから街までのんびり散歩がてら歩いてもいいけど、それは俺ひとりの場合。今日は友だちも一緒だしバスに乗った方が効率的だという結論に自分の中で至った。
「バス?歩き?」
「え?歩きもありなの?」
バス停に向かって歩こうとしたら、玲麻からそんなことを聞かれて聞き返してしまった。
「え、うん。俺はそれでもいいなぁ」
「……俺も歩くのは全然いいけど……本気で言ってる?」
「なんで?」
「だって意外と遠いし」
「髙橋と行ったときも、歩いたよ」
「あーだよな。君ら二人ならそうだよな」
「むしろ優がいいなら歩きたい」
「……んじゃ、歩こう」
一緒に過ごす時間を少しでも長く……みたいなこと言ってたからてっきりなるべく早く街に着きたいものだと思った。
バス停を通り過ぎてそのまま交通量の少ない道路の歩道を歩いていく。
「……クスッ」
「何?」
「ぁううん。なんでもない」
「なんだよ」
「なんでもないって」
「内緒にされると余計気になるだろ」
「……まさか、街まで“遠いよ”って、優に心配されると思わなかったよ」
そう言って玲麻はまた笑った。
どうやら、俺が心配したのは体力面のことだと思ってるようだ。
「おいおい、俺が君みたいな体育会系の人間の体力を心配するとでも?全然してないから安心してください。体力のことなんか全く気にも留めてなかったから」
「ぇうそ、ごめん。俺勘違いした?」
「まぁどうせ俺は君と比べれば断然体力ないからね。そう思われても仕方ないけども。でも俺だって街に行くくらいの体力あるっつーの」
「ごめんって!」
少し臍を曲げて玲麻を置いてさっさと歩いていけば、余裕で追いついてきた玲麻が手首を掴んできた。それでも歩みは止めてやらない。
「遠いって言ったからてっきり何かの心配してたのかと」
「……俺が心配したのは、」
「……うん?」
「…………」
手首は掴まれたまま、歩きながら斜め後ろを振り返れば玲麻は楽しそうに微笑んでいた。
その背後に丁度バスが見えた。先程のバス停に止まるところだった。
「……何?……ぁバス、やっぱり乗る?」
俺の視線を追って振り返り、玲麻もバスの存在に気づいた。
「いや、いい。玲麻がいいなら乗らなくていい」
「……」
徒歩のほうが、回りを気にせず喋れるから。
「……優」
「ん?」
「……俺が歩きたいって言った理由はね」
「んー」
バスが、バス停から発車した。俺が玲麻を少し見上げたとき、走り出したバスが俺たちの横を通り過ぎていった。
「ふたりきりで話せるから」
「…………」
なんで俺がサラッと言えないことを、玲麻はこんなにも簡単に言えてしまうんだろうか。
恥ずかしくて視線を反らそうとしたら少し強めに手首を握られた。
「副会長の話も含めて、ね」
「……あぁ……そうだね」
校門を潜る前に大事な話をしていたことをすっかり忘れていた俺の思考は完全に浮かれてしまっていた。
「と、東舘さんのことは……慎重に話し合いたいっす」
「急がずにね」
あははと今度は爽やかに笑った玲麻は俺の手を引いて歩き出した。
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