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「なんでここに……」
「ははっ、なんでって俺も外出届出して遊びに来てたんですよ」
「ぁそ、そっか……そうですよね」
予想もしなかった人の登場に動揺して当たり前のことを聞いてしまったが、水谷くんは嫌な顔ひとつせず答えてくれる。
「友だちといたんですけど、遠目に先輩見かけて、挨拶しようかなって思って追いかけてきちゃいました」
「君ほんといい子っすね」
「いい子って!」
ケラケラ笑う水谷くんだけど、結構本心で思うよ。
遠目に見かけて、しかも俺は気づいてなかったんだ。立場上目上の人のほうが気付いてないなら挨拶なんて知らんぷりでもいいと思うんだけど。
「成崎先輩がいい人だから、後輩もちゃんと挨拶したくなるんですよ」
「水谷くんに言われると……恐縮です」
頭を軽く下げる。ほんとは否定の意味も込めて深々と下げたいが、店内でそんなことやったら変な誤解を生みそうなのでやめた。
「つか、成崎先輩がこういう店にいるなんて正直意外だったんですけど……?」
「場違いっすよね。それは俺も重々承知して」
「ぁいやっそこまでは言ってないっすよ。成崎先輩、何かスポーツ始めるんですか?」
「いえいえとんでもないっす。今日はプレ」
「優」
水谷くんの話しやすい雰囲気に流されてすっかり話し込んでしまっていた俺は、後ろから現れた玲麻に会話を止められた。
「藏元先輩と一緒だったんですか」
「ぁうん。俺の買い物を手伝ってもらってるっつーか……」
「ちわっす、藏元先輩。さっき、この店に成崎先輩が入っていくのを見かけて、挨拶に」
「そうなんだ。礼儀正しいんだね。わざわざありがとう」
にこっと笑って軽く会釈した玲麻。今のところ、作り笑いとかじゃない普通の笑顔だ。
「水谷くんは、今日はひとりで外出してるのかな?」
「いえ、別の店に友だちがいます」
「……あっ。ごめん、そっち待たせてますよね!?俺が長話なんかしたからっ」
「はははっ気にしないでください、成崎先輩には俺から話しかけたんですし」
爽やかに笑う水谷くんは、どこまでもいい奴。どうやって育ったらこんなにいい奴になれるんだろうか。
「ぁそうだ。俺、どうしてもふたりに直接聞きたいことがあったんです」
「なんすか?」
「ふたりは、」
「うん?」
「マジで付き合ってるんすか?」
「…………」
「…………」
またまた予想外だった。学校の外で、こんな質問されると思ってなかった。
「……え、と……水谷くんそれは」
「うん。付き合ってるよ」
「!玲麻」
「それが何か、水谷くんと関係あるのかな?」
「…………」
牽制するわけでもない、嫌味っぽく言っているわけでもない、真剣に告げる玲麻を水谷くんは数秒見つめてからゆっくりと目を閉じた。
そして、フッと柔らかに笑った。
「……いえ。ただ……」
「気持ち悪いなって、思って。」
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