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窓から見える景色は、静かで綺麗で、一気に冬を感じさせる景色になっている。 「あのさ朝から気になってたんだけどさ、なんかそのカーディガン、ちょっと大きくない?」 「えへへー」 「何その笑いか……た…………あ!も、もしかしてそれって」 「実はこれぇ……先輩に、もらっちゃったぁ!」 「何で黙ってたぁ!!」 「彼シャツならぬ、彼カーディガン!」 「先輩の匂いなんだぁ」 「なんかムカつく!」 惚気話でじゃれ会う後ろの生徒たちに耳だけ傾けながら平和を感じる。 ふわふわと空から降ってくる雪は朝からずっと降りっぱなして、周辺を白銀で覆っていた。 テストも昨日で無事終わり、比較的穏やかな時間が流れる昼休み。職員室に用のあった俺は玲麻も一緒に行きたいと申し出てきたため廊下の窓際で玲麻を待っていた。 「ごめん、お待たせ」 「ん。行こ」 「うわ、結構降ってるね」 「これ絶対止まないよな」 玲麻の雪を見ての感想に笑って返す。寒いけど、綺麗だから嫌いじゃない。 「てか、玲麻も職員室に用あるの?」 「俺は職員室じゃなくて、3年の教室」 「3年?」 「うん。ちょっと、境先輩にね」 「あー……」 その名前に少し気後れして反応を濁す。玲麻は文化祭以来、ファンやそれを統率する境先輩とかなりの頻度で顔を合わせるようになっていた。 それが全部、俺と付き合うため……俺のためだって、分かってる。 分かってるからこそ、申し訳無くて気まずくて、せめて余計なことはしないよう努めている。 「……優」 「ん?」 「言っても多分、優は優しいから、意味ないと思うんだけど」 「?」 「心配しないで」 「……」 「優といれるから、他のことも頑張れてるんだよ?」 「…………何のことでしょう。俺にはさっぱり」 「……ふっ……まぁ、ならいいけど」 何を言われているのかは分かっているけれど、ここは廊下で回りには他の生徒もいる。真剣な話をする場じゃないと誤魔化したら玲麻もそれに合わせて笑って歩き出す。 「ぁ、今日の放課後だよね?」 「……んー……」 「返事が重いなぁ。まさか、もう滅入ってるの?」 「…………ん……」 「早いね。まだあと半日あるのに」 「それだけ俺があの御方を苦手だということ、ご理解いただけただろうか」 「うん。充分。」 「はぁー……」 職員室前に到着して大きなため息を吐いたら、玲麻は俺の頭をポンポンと撫でてきた。 「今日は俺、どこの部活にも行かないから。一緒に頑張ろう?」 「……お前ってほんと頼りになるし、格好いいよなぁ」 「…………」 「まじ拝みたくなる」 「…………」 「…………玲麻?」 頭に手を乗せたまま反応を返してこない玲麻を見上げれば、口元を手で隠してそっぽを向いてしまった。 「…………じゃあ俺、3年の教室行ってくるから、」 「……おぅ」 「ここに戻ってくるから、もし優の用が先に終わったらここで待ってて?」 「……おぅ」 ……俺やっぱり、何かしたんだよな…… 職員室の扉をノックして中に入って、ズッキーに持っていたファイルを手渡す。 「ご苦労さぁん。参加用紙だな?まぁどうせ全員参加だろ?」 「……多分……」 あの日以来、 街に出掛けても、 勉強会がない普通の放課後でも、 テストの早帰りの日も、 また明日って別れるときも、 玲麻はキスしてこなくなった。 「遊園地なぁ。恋人と行ったら楽しいんだろうなぁ。なぁ?成崎ちゃん」 「……まぁ……」 つーか、されるの待ちじゃなくて、俺も男だししたいならこっちからすればいい話なんだけど、そうじゃなくて…… 「……遊園地なんだから、ちゃんと楽しめよぉ?あの王子様と、ちゃんとイチャイチャしろよ?」 「……はぁ……」 玲麻がそういう気持ちを男相手にもう抱かなくなっていたとしたら、俺からだってすべきじゃないだろ。 「…………」 「…………」 「……どうした、成崎」 「……え?」 「ずっと上の空で突っ込んでこねぇし。」 「…………ぁ、何の話してたんでしたっけ」 「だから、何か悩みがあるなら」 「ぁいいです。なんでもないです。じゃあ、失礼します」 「ぁ成崎……!」 ズッキーを信用してないわけじゃないけど、こんな悩み他人に言えるわけもなくて俺は捕まる前にその場から逃げた。

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