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「察し悪くてごめん……」
「むしろ、俗世に染まってないんだなって改めて思えたから、察してもらわなくて良かったよ」
「…………」
玲麻の言っていることがさっぱり分からないんだが。俺が聞いたことに対して言葉を濁してでも親切に答えようとしてくれたのに……普通理解しなかったら少しでも苛つきません?
俺に非があるのに、それを少しも責めずむしろフォローしてくれる玲麻。いつも玲麻には助けられ支えられてばかりだ。
「……声しないね」
「ん?」
「教室のほうから、声しないね」
「ぁあ……珍しくみんな帰ったのかもね……」
見えてきた教室の扉に向かって真っ直ぐ歩いていく。何の音も聞こえてこない。ほんとに誰もいないのか?
扉前に着いてガラス越しに中を覗けば、既に照明も消されていた。
「珍しいー。ほんとに皆帰ってる」
「場所探ししなくて済んだね」
俺に続いて教室に入ってきた玲麻は扉を閉めて、近くの机に寄りかかった。そのちょっとした仕草、立ち振舞いもかっこいいと思えてしまう。
「……さっきの話、続けてもいい?」
「あ、うん。お願いします」
話を再開した玲麻の近くの机に俺も寄りかかる。椅子に座らないのはこのほうが楽だからとかそんな理由で、多分深い意味は両者持ち合わせてないと思う。
「……俺も確証があるわけじゃないんだけどね?」
「ん?」
「多分、風紀委員長と髙橋、好き同士か、もう付き合ってるのかも」
「……………………はぁ!!?」
驚愕の推測に、思わず大きな声を出してしまった。俺の大声に苦笑しながら玲麻はその推測の理由を話してくれる。
「前に髙橋と買い物に行ったとき、よく物を失くすって話になってね。じゃあ自分の物だってちゃんと分かるように目印としてステッカーでも貼ったら?って提案したら、髙橋、ステッカーを買って失くしそうなものに貼るようになったんだよ」
「んん?…………ぁ、じゃあ、その目印のステッカーが風紀委員長様のに貼ってあったと?」
「うん。それが電話してるときにチラッと見えてね。髙橋好みのステッカーを、あの人が自分で買うとは思えなくて……多分、髙橋に貰ったんじゃないかな」
「…………えぇ……?ちょっと待って。仮に、仲が良い以上の関係だったとして…………あのふたりが?……なんで?どうして?」
腕組みして首を傾げて眉間に皺を寄せて悩む。
髙橋が好意を持たれるのは分かる。ちょっと馬鹿だけど、優しいし人懐っこいしかっこいいし面白い。
……だが、あんな複雑骨折のひねくれ鬼畜下衆野郎のどこに髙橋が……
「ふっ……理解できないって顔してる」
「……ぁ……いやだってさ、髙橋は玲麻に惚れてたんだぞ?」
「……優、それは」
「いっいや!俺は、まだ髙橋が玲麻に気持ちあったとしても退く気はないけど!玲麻に惚れてたってことは事実じゃん!」
「退く気無いんだ?」
「……んぇ?」
「嬉しい」
「………………話脱線させんなよ。戻すぞ。俺の言いたいことに戻すからなっ」
腕を組んだままそっぽを向く。お前のほうが何倍も恥ずかしいこと言うくせに、俺なんかの言葉にやたら嬉しそうな顔すんなよ。
「俺が言いたいのは、……玲麻とあの人じゃ、似ても似つかないってことです」
「……でも塚本風紀委員長、髙橋のことになるとやたら気にかけるっていうか、回りへの警戒心が上がるっていうか……大切にしてるんだなって思うこと結構あったよ?だから、優しい面もあるんじゃないのかな?」
へぇ……あの人、俺にだけじゃなく玲麻にも髙橋のことで何か言ってたんだ。
まぁ髙橋を気にかけてたってあの人には自覚ないんだろうけど。
「取り敢えず、玲麻があの人に髙橋の話をしたのは納得したよ。でも俺たちの推測でしかないし?本人が公言してないなら俺たちは、なんとなく見守っておけばいい……よな?」
「そうだね」
「……じゃあそれはオッケーとして……その、俺が本当に聞きたいことは別にあって」
「その前にひとつ、俺からも言っておいてもいい?」
「??おぅ……」
質問を変える前に、前置きされて確認されるとちょっと身構えてしまう。
「優、俺を選んでくれてありがとう」
「…………は?」
「俺も、退く気はないから」
「……!?」
「だから改めて伝えておくね」
「ちょ、ちょ……は???」
「好きです」
「!?!?!?」
な、ななな、なんじゃこりゃ!?一体どういう状況!?
「なんなら、俺たちもお揃いのキーホルダーとか、買う?」
「はぁ!?ば、馬鹿!いらねって!キーホルダーとか俺殆ど使わないしっ」
そんなあからさまな物周りに見られたらどんないじりをされるかっ……!
「ぁ、じゃあ」
俺が玲麻の一言一句に動揺しているなか、玲麻は大真面目に俺を見据えた。
「指輪とか?」
ゆ、……ゆび……指……………………
「……藏元様、本気でおっしゃってます?」
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