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「初めて風紀の仕事に関わったときは、優の助けになればいいなって、ただそれだけだったんだけど……」 言葉を切った玲麻は、俺の顔色を伺うようにチラリと視線を寄越した。 「……なんだよ?」 「……やっていくうちに、優が受けた苛めを、他の誰かも受けてるんだろうかって思うようになって……それで……」 苛めを失くしたいって思った、てことか。 「……すごいな」 「え?」 「俺は……受け流すことしか考えてなかったから……」 苛めは勿論悪いことなんだろうけど。俺は面倒事にしたくなくて声も上げず行動もせず、ただ皆が飽きるのを待ってただけだった。 自分の平穏を守りたい俺と、 他人の平穏のために動こうとする玲麻 人として、出来が違う。 「優こそ、自分の凄さに気づいてないよ」 「……?」 「勘違いとか嫉妬とか、どんな理由があろうと苛めは苛めだよ」 「…………」 「普通の人は、受け流すこと自体出来ないよ」 「それは慣れてただけで……」 「ふっ……だから、普通の人は慣れないんだよ」 こっちは結構真面目に話てんのに、笑われた。 「友だちとして一緒にいるだけで苛められたり、付き合って苛められたり、そもそもそんなこと自体あっちゃいけないだろ」 「…………」 「俺は優をすぐに助けてあげられなかったから……。だから今後は、もうこんな事が起きないようにこの環境を少しでも改善していきたい」 「玲麻っ、俺はもう充分過ぎるくらい、助けられて」 「俺としては、遅すぎたくらいだよ」 「…………」 俺は恩返ししてもしきれないくらい助けられてるのに、なんで、お前ばっかりそんなに責任感じてんだよ…… 「……あ、優。誤解しないでね。罪滅ぼしとか、そんなつもりでやりたいわけじゃないから」 「え……?」 「昔の俺だったら、苛めを知っても、止めはしただろうけど…………先頭に立って解決させるなんて多分しなかった。けど、」 一歩歩みでた玲麻は、俺の右手を両手で包み込むように掴んだ。 「優絡みのことだったから、どうにかしたいって思えたんだ」 「…………」 「いつだって、俺に力をくれるのは、優だよ」 「…………」 …………玲麻、お前本当にかっこいいよな。 背高くて、 顔良くて、 性格も良くて、 運動も出来て、 勉強も出来て、 面白くて、 優しくて、 頼りになって、 だけど、そんな恵まれてるところを一切鼻に掛けず、 むしろ謙遜しすぎるくらい控えめで……………… なぁ、 俺たちって本当に恋人でいるべきなのか? 「…………………………」 「……優?」

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