314 / 321
314
好奇心の目は、案外慣れてきたと思い始めていたけど……
「この子が?」
「へぇー?」
「噂の成崎くん、……?」
「藏元の、ねぇ……?」
「…………」
俺を囲むような形で、まじまじと見てくる俺よりも遥かに大きな人たち。
翌日の放課後、風紀委員会室に入室した玲麻と俺を見るなり、風紀委員たちがすぐに寄ってきてこの状況に至る。
彼等が見てくる理由は、美貌が見たくてとか可憐な姿が見たくてとかでは無いと分かっている。
この好奇心の視線の意味は、え?これ?これが玲麻の?という意味だ。
俺と玲麻の関係が微妙になっているとはいえ、それが他人に知られているわけではないので、まだ一応俺には玲麻の“付き人”……ぁ違った、“恋人”という肩書きがついているのだから。
そりゃ皆、好奇心で見たくなるよな。
しかしながら、期待に応えられない上に幻滅させてしまって本当申し訳ないというか……非常に居たたまれない。
「はいはいはい!もういいだろ。成崎くんめっちゃ萎縮しちゃってるから」
「え、なんで?」
「怖いからだよ。そんな囲まれたらビビるに決まってんだろ。さっさと包囲網解けっての」
風紀委員のひとりが、俺を囲んでいた風紀委員たちの頭をペシペシと叩いて助けてくれた。
「ありがとうございます」
「?……あははっ」
ん?笑われた?
「お前らはさっさと仕事行けよー」
「はいはーい」
「いきなり真面目キャラかよー」
ブーイングしつつも委員たちは委員会室から出ていった。
「……んじゃあ、成崎くん、と、藏元。今日のふたりの仕事を説明するね」
顔立ちは男前、身長は玲麻と同じくらいのその人は、ヘラッと笑顔を作った。先程もそうだが、笑みのタイミングが少し謎だ。
「うちの委員長から、ふたりに仕分けられた仕事だから。担当とか量とか、俺には文句言わないでねぇ」
「不服だったら?」
「まぁ…………どうにもできないかな、はは」
「…………」
まぁ正論だな。この人とは初対面だけど、あの鬼畜様に異論を唱えられるのは宮代さんくらいだと思うから。
……だから、この人を睨むんじゃないよ玲麻。
「じゃあ藏元、今日は外業務ね」
「は?」
「何?」
玲麻の眉を寄せた不満顔に、全く動揺せず聞き返すその人。人間的に、精神的に強い人なのか?
「いや、俺は優のフォローをするって話で今日の仕事を引き受け」
「でも仕分けはこうなってるから。じゃあ、いってらっしゃい」
「……谷」
!!!この人が、谷!!……で、この人、なんかヤバい人なの??
「……あはは。心配すんなって。成崎くんのフォローは大丈夫だから」
え!?この人が、フォロー役!?フォロー役は誰がいいって指名できるほどの立場じゃないって分かってるけど、本性の分からないこの、谷って人は、避けたいんだが!!!
「谷、お願いだから」
「無理無理。委員長指示だから。」
「ちょ、谷っ……!!」
聞く耳持たず、玲麻の背中をぐいぐいと押して、追い出してしまった。
「………………」
「………………」
「…………さて、成崎くん」
「っ……!?」
「始めようか」
多分、風紀委員会業務を教えてくれるだけだと思うのだが、
ゾッとした。
ともだちにシェアしよう!