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反省文に目を通すこと1時間弱(谷くんを無視し続けて1時間弱)。漸く反省文の全てに目を通し終えた。 あとは誤字脱字チェックした反省文と一緒に俺がまとめた用紙をあの御方に提出するだけだが、果たして俺のまとめ方はあの御方のお気に召すだろうか。 ……100%無理だろうな。が、俺は俺なりに手を抜かずやったので、これで完成とする。これ以上はやりません。 よし、次。 席を立って段ボールの前に行き、1つ目の段ボールを開ける。 「……おぉ……」 中身を見て、思わず漏れてしまった声。その声に谷くんが顔を上げた。 「反省文終わったんだ!」 谷くんは自分の仕事を机に置いて、ウキウキ顔で近づいてきた。 声を出してしまった俺が悪いけど……それにしても、自分の仕事を放棄してまで……何故来る? 「凄いでしょ、没収物!」 「はぁ……こんなに有るんですね」 雑誌やゲーム機から、化粧品やアクセサリーなど、大小様々な物がたくさん入っていた。これがあと2箱もあると思うと、返却物の捜索は困難だなと少し億劫になる。 「没収されて、しかもすぐには返ってこないのに、なんで学校に持ってくるんすかね」 「おいおいおい、野暮なこと聞くんじゃないよ成崎くん」 「?」 理解できないよねという、ある意味風紀側の意見を言ったつもりだったのだが、谷くんは肩を竦めてやれやれとでも言いたげに笑った。 「駄目な物だって分かってる、バレたら没収だっ!でも、それでも持っていって皆と楽しみを分かち合いたい!……みたいなさ、そういう、ハラハラドキドキワックワク!が、青春というのでしょうが」 「………………」 出会った当初から無茶苦茶やってる人に、“青春”というド定番ワードの説明をされるとは思ってもみなかった。谷くんの場合、青春通り越して危険行為だよ。 「なんだよその目ぇ。冷めきった目しちゃってさぁ……さては成崎くん、年齢詐称してるな?ほんとは社会人5年目とか?」 「学生時代の過ごし方は人それぞれでしょ」 「甘酸っぱい思い出とかいらないの?作りたいと思わないの?」 「平穏を常日頃から望んでます。もし出来るなら、ドキドキハラハラってやつ、欲しい人に俺の分引き取って欲しいくらいですよ……」 そのドキドキハラハラのせいで、俺がどれだけ寿命を縮めてきたか…… 「その発言、聞く人が違えば羨ましい発言だよねー。人一倍、青春を謳歌してるってことじゃん」 青春を謳歌してる?戦場を生き抜いてる、の間違いだろ。 「……うーん……なんか勿体無いね。せっかく藏元みたいな相手がいるんだからさぁ。もうちょっと学生らしくはしゃいでもいいんじゃない?」 「……余計なお世話っす」 ……とは言ったものの、谷くんの意見も一理ある。見た目ですら地味なのに、性格も根暗だったら愛想尽かされるに決まってる。 「……じゃあ特別だぞ?」 「?」 俺が少し考え込んだからか、谷くんはしょうがないな~と呟きながら開けていた段ボールに手を突っ込んだ。 そして押収物をひとつ、手に取った。 「これ、内緒であげるね」 「……はぁ!!!?」 手に持っていたのは掌サイズの箱。それは俺でも分かる、ブツ。 男女の、……いやここでは男同士でもあり得るのか、そういった行為の場で主に男側が使う……ゴムだった。 なんでそんなものが押収物にある!?つーか学校に持ってくんなよ!?馬鹿じゃねぇの!?いや馬鹿だ!!! それを持つ谷くんの手首を掴み、俺から遠ざけようと押し返す。谷くんはニヤニヤと相変わらず楽しそう。 「いらねぇよそんなもん!!」 「やだ成崎くん、全部はさすがにあげられないって。ほら、これもう箱は空いてるからさ、中の一袋だけあげるから」 「いらねぇええぇええ!!結構です!!つか一言も欲しいって言ってねぇええ!!なんで拒否ってんのに渡そうとすんだよ!!?」 一袋だけ出すと、力業で俺に渡そうとしてくる谷くん。片手には箱、もう片方に取り出した一袋。その両方の手首を掴んで押し返そうとする俺。 なんだこの状況はっ……!! 「これひとつ持ってるだけでドキドキするでしょ?」 「阿呆かぁあ!!なるかぁあ!!気持ち悪いだけだぁああっ!!」 俺はそれはもう必死に拒絶しているのに、谷くんの笑みがどんどん増している。 この人っ、ほんと異常だっ……!! 「ちなみに使うのって……どっちなんだろ?」 「!!?」 ひぃいいいっ……!! 恐怖と悪寒で悲鳴を上げそうになったとき、委員会室の扉がゆっくりと開いた。 そこから流れてきた空気に、冷気を感じたのは俺だけだろうか。

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