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凍てつく視線、眉間に寄る皺、ほんの少し噛まれている唇、怒気を制御するかのような静かな動作。 綺麗な顔の人が怒ると、ほんと怖いよなぁ…… 「近付きすぎるなって、言った筈だけど」 静かな声で玲麻は谷くんに諭すように呟いた。声も動作も荒々しさがない。だけど、これは確実に怒っている。玲麻の忠告を、谷くんも俺も守らなかったから。 「おいおいー。こっちにも色々事情があったんだよー?俺と成崎くんの話も聞けっての」 「事情?そんなにくっつくほどの事情って、一体どんな事なんだろうね」 玲麻の眉間の皺が更に深くなった。さすが谷くん、空気読まなさすぎて玲麻の機嫌を見事に悪化させたよ。 「まぁ?恋する奴等は色々試行錯誤するってことだよ」 わけの分からない一言とともに、谷くんはわざとらしく両手を胸の前で構えると、取り出した“あの一袋”を元の“あの箱”に仕舞った。 視野が狭くなっていた俺はそこで漸く、谷くんのそのわざとらしい手の動きのせいで玲麻がそのブツに気が付いたのだと気付いた。 つまり、玲麻が怒っていた理由は俺と谷くんとの距離のことのみでブツは見えていなかったのだ。 それなのに谷くんは状況を理解した上で、火に油を注いだんだ。 「谷……本当のこと言え……優と、何してた」 「!!?ち、違うっ、玲麻!!?マジで、本当に、誓って!!何もしてませんよぉおっ!?」 「あははっ!ねぇねぇ成崎くん、ドキドキするでしょ?」 「はぁあ!?」 「楽しいねっ」 この人っ……完全にドキドキの意味履き違えてる!!これのどこが甘酸っぱいになるんですか!?命の危機を意味するドキドキがあなたの青春なのですか!? 「谷くん!それは絶対間違って」 「へぇ。なりちゃんって、純情そうに見えてそういうこともできる子だったんだ」 …………なり、ちゃん……? そのあだ名で呼ぶ人を俺はひとりしか知らない。この場にいる筈無い。そう思いながらもゆっくりと声の出所に視線を向けた。 「…………なんで……ここに……」 玲麻の背後、委員会室の外、扉の影からゆっくりとその綺麗な姿は現れた。 「さっき、校則違反を風紀委員……代理に見つかっちゃってねー」 東舘さんは玲麻を笑いながらも鬱陶しそうに見た。 生徒会副会長でありながら、風紀に捕まったのか………… 「つーか、なりちゃん。浮気してくれんなら俺ともしてよ。浮気するなりちゃんとか、めっちゃ興味湧く。楽しそう」 俺に関心無くなったとか言ってた人が、またわけの分からないことを………………つーか!!浮気なんかしてねぇって!!! なんで浮気前提で進んでんだよ!! この混沌とした状況をどう正そうか頭を抱えていると、先程まで楽しんでいた谷くんから漸く笑みが消えた。 「………………ん?……あれ?…………ねぇねぇ成崎くん、これ今……どういう状況なの?」 お前のせいだわ馬鹿野郎!!

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