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第33話
「じゃあキッチン借りるねー」
部屋に入るなり先輩はそう言いスーパーの袋をガサガサと漁っていた
人んちなのによくもまぁここまで遠慮なしに出来るのもこの人の凄さだと思う
何か手伝おうとしたら断られてしまった
調理器具の場所だけ聞かれたが、普段自炊をしない俺の家にある物は菜箸のみ
箸とスプーンとフォークさえあれば何とかなるだろ
待っている間俺は散乱したテーブルの上を片付けていた。流石に埃が乗ったテーブルはいかんだろ
「おまたせ」
先輩が両手にお皿を持ってこちらにやって来た
「もうびっくりしたよ。前にお玉探してなかったからスプーンを代わりに使ったけど憂んち包丁もなかったんだね!代わりに引き出しに入ってたハサミを使わせてもらったよ」
『あー俺んち食器とか鍋とかはあるんだけどそれ以外のもんなくて……ハサミで全然大丈夫!』
「ふーん……」
何とも言えないような表情をした先輩が置いたお皿の上には……これはクリームパスタかな?いい匂いだー
「もうね、玉ねぎとか切るの本当に大変だったんだから。まさか包丁がないとか思わないからさ、別の物にしようかとも悩んだんだけど……うん、取り敢えず食べよう」
『いただきます!』
俺は早速パスタに食らいついた
んー!コンビニパスタとは比べ物にならないぐらい美味い……手作りサイコー
『美味いっす!』
「あんまり時間ないからソースはレトルトをちょっとアレンジしただけだけどね。本当だったらホワイトソース作りたかったんだけど」
『ホワイトソースなんて作れるの!?俺缶に入ってるのしか知らない!』
「また今度作ってあげるよ」
『やった!』
自然としたまた今度の約束
先輩作ってくれたパスタは本当に美味しくて、味わって食べようと思った頃にはもうお皿の中がからっぽになっていた
「俺の分も食べる?」
『え?でも先輩の分が……』
「実は軽く食べて来たんだよね。いいよ、あげる」
そう言って味見程度ぐらいしか手がつけられていないお皿を目の前に差し出された
食いてぇ……いやっでも先輩の分だし……軽く食べて来たって言ってるし……あーでもせっかく作ったのに俺ばっか食うのも……
自分の中で激しく葛藤が起こっている
「……仕方ないなぁ」
『むぐっ』
それが顔に出ていたのか、先輩は1口分取り俺の口の中に入れてきた
『……いただきます』
「どうぞ」
結局先輩の分も俺が頂く事に……
「ふふ、間接ちゅーだね」
『ぶっ!!!』
先輩がいきなり変な事を言うから口の中の物が盛大に吹き飛んだ
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