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第51話
アパートの前で車が停まった
窓から自分が住んでいるアパートの外観を見てまた溜息が出た
夢の国から現実に引き戻されたような感覚だ
『送ってくれてありがとう。先輩んちからここまでそんな遠くなかったんだな!大体の道は覚えた!』
「あえてわかりやすい道を通ったからね。裏道使ったらもっと早く着くよ」
『そうなんだ』
「そうそう、これ憂んちに置いててよ」
『これって?』
今日先輩が買い物してた調理器具達……
そこで初めて俺は先輩が最初から俺んちに置く為にこれだけの物を買ったのだと気がついたんだ
『ったく、わかったよ。色々作ってもらってるし』
「ふふ、ありがとう」
車を降りて荷物を取ろうとした時、先輩に手を掴まれた
『な、何?』
「ちょっと寂しくて」
『えっ?』
思わずドキッとしてしまった
『えっと……先輩?』
「ううん、何でもない」
そう言って先輩は俺の手を離しハンドルを握った
「じゃあそろそろ帰るね、おやすみ」
『う、うん。おやすみ』
先輩から託された荷物を両手に持ち、先輩の車を見送った
部屋の中に入り、荷物を置いて取り敢えず部屋着に着替えた
何だろう……さっきの先輩を思い出すとまたドキドキしてきた
ここ最近よく先輩と一緒にいたせいか、1人で居る部屋が静か過ぎて変な感じがする
寂しい……さっき先輩は確かにそう言った
あれ?変だな……
何か俺もちょっと寂しいかも
一緒に居る時間が長かったせいかな
気を紛らわす為に今日ゲットした新しいゲームをしようと袋を開けた
だけど何だろう、あれだけやりたかったのに今はそんな気になれない。俺とあろう者が何か変だぞ
ダメだ、やっぱりゲームは明日しよう
ゲーム機を布団に向かって投げシャワーを浴びる事にした
うう、体洗うのがツライ。この痣早く治らないかな
『湿布……まいっか』
シャワーを浴びた後服を着て濡れた髪のまま布団の中へ潜り込んだ
新しいゲームは明日にしてあっちの森でもしよっと
そう思いゲーム機の電源を入れ没頭する事にした
あっこの匂い……
布団の中からふわっと先輩の匂いがした
なんだろう、落ち着くいい匂いだ……
って変態かよ!!何嗅いでるんだよ俺!!気持ち悪りぃ!!
ムシャクシャしながらゲームをしていると、急にオンラインの表示が画面に出た
『んん?あっ』
先輩だ!先輩が入って来た!
ゲームの中の先輩はぐるぐると俺の周りを彷徨いていた。一体何をしてんだか
相変わらず先輩は下手くそなままで、逆走したり自分から落ちて行ったりと珍行動ばかりしていた
それが何だか可笑しくて1人で笑ってしまった
そして寝落ちするまで、俺は先輩とゲームの中で一緒にいたんだ
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