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第54話
「お前ちょっと来い」
腕を掴まれ、無理矢理立たされた
おいおいマジかー!ってか最近ツイてないな……
でも先輩の事を言われるのは嫌だった。こんな奴に絶対関わらせたくない
ああ、俺は一体何処に連れて行かれるんだろう
「失礼しました」
職員室を出て教室に戻ろうとする尾澤会長
各部活動、各委員会から提出された報告書の確認をしようと思っていたのに予想より時間がかかりそうだったからまた放課後残る事になった
生徒会長も楽じゃない……
資料が入ったファイルを片手に考え事をしながら廊下を歩いていると、少し離れた所でさっき遭遇した憂君をまた見つけた
今度は誰かといるみたいだけど何処に行くつもりなのかな。もう授業が始まるはずなのに
階段を登り、自分の教室に入り席に着いてからファイルを鞄の中に入れ次の授業の教科書を開いた
それと同時にチャイムが鳴り教室に入って来た先生
いつも通り何事もなく授業が始まり退屈な時間が始まる
憂君と一緒にいた彼、憂君とは違った感じのお友達だったな……
さっきの光景を思い出し、何となく朔夜を見てみた
頬をついて何かを書いているみたいだった。何やら授業内容とは別の事をしているようだ
まあ彼はかなり頭がいいから授業なんか聞かなくても問題はない
昼休み朔夜は憂君に会いに行っていたみたいだが、会えたのだろうか……
「すいません先生、具合が少し良くないので保健室に行ってもよろしいでしょうか?」
俺がそう言うと朔夜がぱっとこっちを見た
「大丈夫か?わかった。生徒会も今は忙しいからなぁゆっくり休んでおいで」
「ありがとうございます」
許可を貰い、机の上だけ片付けをしてから教室を出た
普段から真面目にしている分先生からの信用はかなりある。だけど、今回はすいません嘘をつきました
さっき見た光景が妙に気になる
体育館倉庫の件もあるし、憂君達はどこに行ったのか……
「入れ」
『痛いって』
1年の教室がある階の男子トイレに連れ込まれてしまった
「お前何調子に乗ってんの?」
『……いつの時代のヤンキーだよ。ださっ』
思った事がつい言葉に出てしまった
普段ヘタレな癖に何でこう言う時に限って……俺って根性あるのかないのか自分でもよくわからん
最近朔夜先輩と一緒にいる事が多いし自信家の先輩に少し感化されちゃったのかも
カッとなったのか、相手の表情が急に変わったのがわかった
ちょっとヤバい
『ーーっ!』
胸ぐらを掴まれたと同時に左頬に凄い痛みを感じた
『いっ……』
膝をつき口を手で押さえた
血の味がする……
「雑魚のくせしてイキってんじゃねーよチビが」
また胸ぐらを掴まれ無理矢理立たされた時服が捲れ上がった。その時、見られてしまったんだ
「……何お前?ちょっと脱げよ」
『……っやめろ!』
俺の体についた無数の痣を見てそいつは笑い出した
「何だよお前元々いじめられっ子かよ!超ウケる!誰?お前は誰に虐められてんの?まさか朔夜先輩?」
『違う!』
「へーあの先輩そういう人だったんだー」
『違うって言ってるだろ!』
「……まあいいや。前から何となく気に入らなかったし、お前今日から俺の犬な」
『は?ふざけんな』
「まずは口の利き方から躾だな」
『……っ』
「ここで何をしているのですか?」
その時男子トイレのドアが開いた
『尾澤会長……』
「会長?……別に何もしてねーよ、連れションしてただけでーす」
「本当に?」
「はーいもう授業に戻りまーす」
相手は3年。しかも生徒会長だとわかった瞬間態度が急変した
パッと手を離し一瞬俺を睨みつけた後そのままトイレから出て行った
「……大丈夫ですか?」
『ありがとうございます、助かりました。でもどうして……いっ……』
「出血しています。これを使って下さい」
そう言って尾澤会長はハンカチを俺の唇に当ててくれた
その時、安心したのか体の力が抜けるのを感じたんだ
「おっと」
『ご、ごめんなさい』
咄嗟に尾澤会長にしがみついてしまった
そして会長もそんな俺を両手でしっかりと支えてくれたんだ
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