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第55話
「どうぞ入って下さい」
『お、お邪魔します』
「ふふ、家ではないんですからそんなに緊張しないで下さい。ここだったら誰も来ませんので」
尾澤会長に連れて来られた場所は生徒会室
初めて入ったんだけど普通の教室とは全く違っててびっくりした。お客様用みたいな大きめのソファーもあるし、小学生の頃に見た校長室のような感じだ
『あの、会長は教室に戻らなくてもいいんですか?』
「ええ、保健室に行くと言ってありますので大丈夫ですよ。たまにサボるのも悪くないですね……あ、他の人には内緒ですよ?」
『勿論です』
「どうぞお掛け下さい」
『ありがとうございます』
ソファーに座らせてもらい一息ついた
続いて尾澤会長も俺の隣に座った
「保健室に行こうかとも考えたのですが他の生徒もいますので……では傷を見せて下さい。ほら、口を開けて」
『えっ?こ、こうですか?』
言われた通り口を開けた
「……口の中が少し切れてますね。場所が場所だから出血の量も多かったのかも知れません」
『そうなんですか?あっハンカチ汚しちゃってごめんなさい。弁償します』
「いえいえ、それはそのまま憂君に差し上げますよ。それと体の痣は?」
『ああ、これは体育館倉庫に閉じ込められた時のやつなんで……暴れた時に自分でやっちゃったやつです』
「さっきの彼とは関係ないのですね?」
『はい。これは違います』
「そうですか」
『……』
尾澤会長と2人きりなんてちょっと緊張してしまう
どうしよう、沈黙がツラい……何か話題を振らないと
そう思っていたら、尾澤会長が先に口を開いた
「今生徒会でも色々問題がありましてね、部活動の事だったり委員会の事だったりヤンチャな方が多いので喧嘩だとか虐め問題だとか備品が壊されたり盗まれたり……たまには私も休みたいものです」
『めっちゃ大変じゃないですか』
「そうですね。……憂君、あなたは先程何故殴られたのですか?」
『えっ?』
「憂君は体育館倉庫の件もあります。虐めだとすれば許せません」
あーきっと尾澤会長も俺が虐められてると思ってるのか。でも、そうなのかなと少し思い始めた自分がいた
『標的にはされたかも知れないです。……さっきの奴に腹が立つ事を言われたんで俺もつい強気になっちゃって……この後教室に戻るのが少し不安かも』
「腹が立つ事?」
『はい。あいつが朔夜先輩の事利用しようとしたんで腹が立っちゃってつい……それで何か俺の態度が気に入らなかったみたいです』
「それでトイレに連れ込まれたと?」
『はい』
「わかりました。……大丈夫、私が何とかします」
『何とか?』
「虐めは退学処分です。それに朔夜を利用するなど愚かな考えを持つなんて許せません。徹底的に叩き潰します」
叩き潰す……
な、なんか尾澤会長の闇の顔を見てしまったような気がする
「倉庫の件も彼が?」
『わかりません。でも違うと思います』
「何故?」
『直接俺を連れ込んで殴るような奴なんで何となく……』
「そうですね。陰湿な真似はしないでしょうね」
『はい』
一体誰が何の為に俺を閉じ込めたのか
心当たりがないから本当に犯人の見当が全くつかない
もしまた何処かに閉じ込めたらどうしよう……
「そんな不安そうな顔しないで下さい。二度と起こらぬよう私も頑張りますから」
そう言って尾澤会長は俺の頭を優しく撫でた
な、なんか俺ってよく頭撫でられるような気が……
「朔夜の気持ちがわかるような気がします」
『え?』
「ひとつひとつの仕草や表情が可愛くて仕方がないし、危なっかしいから放っておけないし、小さいのに強気な所もあるし、面倒臭がりなのに実は真面目だし……そんな所ですかね?」
『それ朔夜先輩が言ってたんですか?』
「ええ。今日の朝聞きましたよ」
な、なんつー事を……
いや、俺は朔夜先輩にそう思われてるのか
ってか完全に子供扱いじゃないか!
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