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第56話
話題は朔夜先輩の話になった
「朔夜は本当に憂君が大切なのだそうですよ」
『まあ確かに良くしてもらってます。だけど、何の取り柄もない俺にどうしてここまでしてくれるんだろうって疑問に思う事がたまにあります』
「彼は人を寄せ付けない所がありますからね……教室の中でも必要事項以外誰とも会話をしませんし、初めて朔夜が憂君と一緒にいたのを見た時は私も正直驚きました。朔夜とは図書室で?」
『はい、まあ……でも俺全く朔夜先輩に気付いてなくて』
俺はここで朔夜先輩と仲良くなった経緯を話した
「成る程……私の時は最初かなり無愛想でしてね、同じクラスであり生徒会長だからと私が色々と校内を案内しておりまして。一方的に私ばかり喋っていましたが日々を重ねて行く度に少しずつ心を開いてくれたのか普通に会話をしてくれるようになりました」
『そうなんだ……』
「ですがプライベートではまだ1度も朔夜と関わった事はありませんね。まだその領域には達していないのかと。ですが私も生徒会が忙しいので……なかなか難しいものです」
『あはは……』
なら短期間で遊びに行ったり一緒に飯食ったり寝泊まりしている俺って一体……
『でも朔夜先輩は尾澤会長の事めっちゃ信頼してると思います』
「そうですかね?」
『はい!それは間違い無いかと』
『はは、だといいのですが』
ほんのりと笑う尾澤会長を見て何だか和んでしまった
こういう人の事を癒しキャラって言うのかな?
なんか話しやすいな……
「私には憂君と同じ年齢の弟がいましてね」
『そうなんですか?』
「正確にはいた……になりますか」
『……?』
「私が生徒会長になったのには理由があるんですよ」
尾澤会長はそう言うと、どこか遠い所を見ながらゆっくり俺に話をしてくれたんだ……
「私が中学3年の頃でした。弟は中学1年で、とても頭の良い子でした。小さい頃から私の後ろをひっついて歩いてとても可愛くて……
ですが、些細な事で虐めの対象になってしまい自ら命を……とても繊細な子だったんです」
『そんな……っ』
「気付いてあげられなかった事が凄く悔しくて……虐めが無くなる事はありませんが、せめてそうなる前に阻止出来ればと思い生徒会長になりました。
私の周りで二度と虐めなど起こさせません。まあ生徒会長の立場は色々と大変な事も多いですがその分権力を持つ事ができるので役に立つ事もあります」
突然聞いてしまった尾澤会長の辛くて悲しい過去
こういう話って、どう言葉にしたらいいのかわからない。俺って頭悪いから……ただ頷くばかりだ
「憂君はどこか弟に似ているような気がして……すいません、暗い話をしてしまいましたね」
『いえっ、俺頭悪いしポンコツだし逆に申し訳ないです』
「もっと自分に自信を持って下さい。何せ憂君はあの朔夜が心を許した子ですよ?憂君は素直でいい子なんだと私も思います」
『いやいやいや……』
人から褒められる事なんてないから恥ずかしくなる
「そろそろ血は止まりましたか?」
『えっ?ああ、多分……』
「時間が経ったので徐々に腫れてきましたね。何か冷やす物を持ってきますので少し待ってて下さい」
尾澤会長はそう言い、生徒会室を出て行った
その時、チャイムの音が鳴り響くのが聞こえた
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